片頭痛の新しい予防薬として登場した「アクイプタ®(アトジェパント)」と「ナルティーク®OD(リメゲパント)」。
どちらも比較的新しい飲み薬であり、「結局どちらがよいのですか?」という質問を受けることがあります。
現時点では、この2つの薬を直接比較した臨床試験(Head-to-head試験)は行われていません。しかし、それぞれの臨床試験データを統計学的に補正して比較した間接比較研究(Matching-Adjusted Indirect Comparison:MAIC)が発表されています。
2024年には海外の患者さんを対象とした研究、2026年には日本人患者さんを対象とした研究が報告されました。本コラムでは、この2つの査読付き論文をもとに、両薬剤の特徴や違いについて解説します。
アクイプタ、ナルティークとは?
アクイプタ(一般名:アトゲパント)とナルティーク(一般名:リメゲパント)は、どちらもCGRP受容体拮抗薬(gepants)と呼ばれる新しいタイプの片頭痛治療薬です。
片頭痛発作では、脳内でCGRP(Calcitonin Gene-Related Peptide)という神経伝達物質が増加し、血管拡張や痛みの伝達に関与すると考えられています。
これらの薬はCGRPの働きを抑えることで、片頭痛発作を起こりにくくします。
従来の予防薬は、高血圧やてんかん、うつ病などの薬を片頭痛にも応用していましたが、CGRP受容体拮抗薬は片頭痛の病態を標的として開発された初めての経口予防薬です。
共通点:どちらもCGRPを標的にした新しい予防薬
両薬剤には多くの共通点があります。
- CGRP受容体を阻害する
- 飲み薬である
- 片頭痛の病態を標的として開発された
- 従来の予防薬とは異なる作用機序を持つ
そのため、「どちらを選べば良いのか」が気になる方が多い薬剤です。
アクイプタとナルティークの基本的な違い

違い① 飲み方が異なる
最も分かりやすい違いは服用方法です。
アクイプタ
- 1日1回服用
- 予防療法(片頭痛が起こりにくいように毎日内服する)のみ保険適応
ナルティーク
- 2日に1回服用
- 口腔内崩壊錠(OD錠)
- 急性期治療(片頭痛が起こった時に頭痛を抑えるために内服する)、予防療法のどちらも保険適応
- 片頭痛が起こったとき(片頭痛が起こりそうなとき)ときだけ内服する、といったことも可能。
アクイプタは毎日の予防服用を目的とした薬であるのに対し、ナルティークは予防療法としての定期服用に加え、頭痛発現時のオンデマンド服用にも対応しています。薬価(薬自体の値段)が高いため「毎日飲み続けるのは…」と感じる方にとっても、ナルティークは柔軟に使いやすい選択肢といえるでしょう。
片頭痛のおこる頻度やタイミング、生活スタイルに合わせてアクイプタとナルティークを選択することも大切です。
違い② 発作時にも使える?
ナルティークには大きな特徴があります。先ほどと同じような内容ですが、
ナルティーク
- 予防薬として使用可能
- 発作時の頓服薬としても使用可能
一方、
アクイプタ
- 予防目的のみ
つまり、
「予防薬と急性期治療薬を兼ねたい」
という片頭痛の方にはナルティークが選択肢になります。
これは薬の役割の違いであり、どちらが優れているという意味ではありません。
違い③ 予防療法の効果を比較した研究
今回、最も注目するのが、この2本のMAIC研究です。
直接比較試験ではありませんが、
- 海外研究(2024年):Cephalalgia. 2024;44(2).
- 日本人研究(2026年):Expert Rev Neurother. 2026;26(1):91-100.
のいずれでも、予防療法として定期的に内服した場合
アクイプタの方が月間片頭痛日数を減少させた、急性期治療の内服日数を減少させた
という結果が報告されました。
月間片頭痛日数(MMD)の減少
図1 月間片頭痛日数はどれくらい減った?

海外の研究では、
・アクイプタでは開始前と比較して片頭痛の日数が約2.45日減少していました。
・ナルティークでは開始前と比較して片頭痛の日数が約0.8日減少していました。
☆ アクイプタのほうが約1.65日有利であったとの結果でした。
日本の研究では、
・アクイプタでは開始前と比較して片頭痛の日数が約2.83日減少していました。
・ナルティークでは開始前と比較して片頭痛の日数が約1.50日減少していました。
☆ アクイプタのほうが約1.33日有利であったとの結果でした。
いずれも統計学的に有意な差でした。
急性期治療薬を使う日数
図2 急性期治療薬の使用日数

発作時に鎮痛薬などを使用する日数も、アクイプタの方がより減少しました。
海外の研究では、
・アクイプタでは開始前と比較して頓服(頭痛の時に飲む薬)の回数は約2.28回減少していました。
・ナルティークでは開始前と比較して頓服の回数は約0.20回減少していました。
日本の研究では、
・アクイプタでは開始前と比較して頓服の回数は約2.77回減少していました。
・ナルティークでは開始前と比較して頓服の回数は約0.80回減少していました。
急性期治療薬を使う回数が減ることは、日常生活への支障が軽減している一つの指標と考えられます。
生活の質(QOL)
図3 生活の質(QOL)の改善

頭痛による生活への支障を評価するスコアでも、
アクイプタ群の改善がやや大きい結果でした。
ただし重要な注意点があります
今回紹介した結果は、
アクイプタの有効性とナルティークの有効性を直接比較試験ではありません。
それぞれ別々の臨床試験を統計学的に補正して比較した解析です。
そのため、
- 患者背景
- 試験デザイン
- 評価方法
などの違いを完全に取り除くことはできません。
また、両研究ともアクイプタの製造販売企業から研究資金提供を受けています。
そのため、結果を解釈する際には、この点も踏まえる必要があります。
違い④ 副作用は?
図4 副作用の比較
安全性については、

海外研究、日本人研究ともに、
- 有害事象
- 治療中止率
に有意な差は認められませんでした。
つまり、
現時点では、安全性や継続しやすさは両薬剤で大きな違いはない
と考えられます。
どちらを選ぶべき?
予防療法としての有効性
間接比較研究では、予防療法として定期服用した場合、アクイプタの方が片頭痛日数をより大きく減少させる可能性が示されています。すなわち、予防療法として毎日継続服用するならアクイプタが有利といえそうです。
安全性・継続性
副作用プロファイルおよび治療継続率については、両剤間に大きな差は認められていません。
使用場面の柔軟性
ナルティークは急性期治療にも保険適用があるため、片頭痛発作時のオンデマンド服用が必要な場面ではナルティークを選択することになります。
服用方法
両剤は用法(服用頻度・剤形)においても異なる特徴を持ちます。

予防療法として毎日飲み続けるならアクイプタ、発作時のオンデマンド使用も視野に入れるならナルティーク、という使い分けが現実的な方向性となりそうです。
実際には、
- 片頭痛の頻度
- 発作の重症度
- 急性期治療薬の使用状況
- 生活スタイル
- 他の病気や併用薬
などを総合的に考えて薬剤を選択することが重要です。
当院での考え方
当院では、こうした研究結果は重要な参考資料の一つとして活用しています。
しかし、最終的な治療薬の選択は、
- 症状の経過
- 生活スタイル
- 治療歴
- ご希望
を丁寧に伺ったうえで、一人ひとりに合った治療をご提案しています。
新しい薬ほど「どちらが優れているか」が話題になりますが、本当に大切なのはその人ごとに合った治療方法を選ぶことです。
片頭痛でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
ペインクリニック芦屋ピッコロ診療所は西宮市、芦屋市、神戸市東灘区地域で片頭痛など慢性頭痛を中心に診療を行っています。
参考文献
- Tassorelli C, et al. Comparative efficacy, quality of life, safety, and tolerability of atogepant and rimegepant in migraine prevention: A matching-adjusted indirect comparison analysis. Cephalalgia. 2024;44(2).
- Takizawa T, et al. Comparative effectiveness of atogepant and rimegepant for migraine prevention in Japanese patients: an anchored matching-adjusted indirect comparison. Expert Rev Neurother. 2026;26(1):91-100.
- Ailani J, Gandhi P, Lalla A, Halker Singh R, McAllister P, Smith JH, Dabruzzo B, Chalermpalanupap N, et al. Cost per treatment responder analysis of atogepant compared to rimegepant for the preventive treatment of episodic migraine. Headache. 2024;64(9):1115-1124.
- Ailani J, Gandhi P, Lalla A, McAllister P, Bilchik T, Nahas S, et al. Network meta-analysis comparing efficacy and safety outcomes of atogepant, rimegepant, and galcanezumab in patients with episodic migraine after including CHALLENGE-MIG trial (P9-12.007). Neurology. 2025;104(17 Suppl):P9-12.007.
本コラムについて
本記事は学術論文をもとに作成した医学情報の解説です。紹介した比較結果は統計学的な間接比較解析(MAIC)によるものであり、アクイプタとナルティークを直接比較した臨床試験の結果ではありません。また、治療効果や副作用には個人差があり、特定の薬剤の有効性や安全性を保証するものではありません。実際の治療方針は、医師が患者さんの症状や既往歴などを総合的に判断して決定します。

