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エムガルティ注射とナルティークの内服、どちらが片頭痛を抑制する効果が高い?

片頭痛の最新の予防治療には、エムガルティⓇ(ガルカネズマブ)をはじめとしたCGRP関連抗体薬の注射と、 ナルティークⓇOD錠(リメゲパント)のようなゲパントの飲み薬があります。

「注射の方が飲み薬より強く効くのでは?」

「飲み薬のほうが手軽でよいな」

と迷われる方が多いと思います。

エムガルティとナルティークを直接比較した580人のランダム化比較試験では、 月間片頭痛日数が50%以上減った患者さんは、エムガルティ62%、ナルティーク61%でした。

この研究では、エムガルティとナルティークのどちらのほうが片頭痛を抑制する力が優れているかということは示されませんでした。

「2つの薬の効果が完全に同じ」と証明されたわけではありません。現在の研究を総合すると、「注射だから必ず飲み薬より強い」「飲み薬だから効果が弱い」と単純に考えることはできない というのが妥当な結論です。

エムガルティとナルティークは、どちらもCGRPを標的とした片頭痛治療薬

片頭痛の発症には、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という神経細胞の間で情報の橋渡しをする物質が深く関係しています。 近年、このCGRPの働きを抑えることを目的とした片頭痛治療薬が登場し、予防治療の選択肢が大きく広がりました。

エムガルティⓇ(ガルカネズマブ:以降 エムガルティ)がは、 CGRPそのものに結合するモノクローナル抗体です。 皮下注射によって投与し、CGRPが受容体に作用するのを抑えます。

一方、ナルティークⓇOD錠(リメゲパント:以降 ナルティーク)は、 「ゲパント」と呼ばれる低分子CGRP受容体拮抗薬です。 飲み薬としてCGRP受容体の働きをブロックします。

つまり、どちらも同じCGRP経路を標的としていますが、 「抗体を注射する治療」と「CGRP受容体を飲み薬で阻害する治療」 という違いがあります。

では、実際に片頭痛を減らす効果にはどのくらい差があるのでしょうか。

エムガルティとナルティークの有効性を直接比較した研究があります

2024年、Schwedtらはエムガルティとナルティークを直接比較した臨床試験を報告しました1)。 CGRPを標的とする抗体薬とゲパントを直接比較した重要な研究です。

対象となったのは、1か月に4~14日の片頭痛がある反復性片頭痛の方、580人です。 平均年齢は42歳、83.1%が女性で、治療開始前の月間片頭痛日数は平均8.4日でした。

参加者は無作為に次の2群に分けられました。

  • エムガルティ群:287人
    初回240mg、その後120mgを月1回皮下注射
  • ナルティーク群:293人
    75mgを隔日に内服

治療期間は3か月です。

さらにこの試験では、患者さんにも、研究者にも、どちらの治療を受けているか分からないように、 エムガルティ群には本物の注射と偽の飲み薬、 ナルティーク群には本物の飲み薬と偽の注射を使用する 二重盲検・double-dummy法が採用されました。

注射と飲み薬という投与方法の違いによる期待の影響をできるだけ小さくして比較した、 質の高い研究デザインです。

一番重要な結果:片頭痛日数が半分以下になった人は?

この研究で最も重要な評価項目は、 「3か月間を通して、月間片頭痛日数が治療前より50%以上減った患者さんの割合」 でした。

結果は次の通りです。

治療月間片頭痛日数が50%以上減少
エムガルティ62%
ナルティーク61%

両群の差は統計学的に有意ではなく、P値は0.70でした。 つまり、エムガルティとナルティークの間で、どちらが優れていることは示されませんでした。1)

100人の患者さんがいたとすると、 片頭痛日数が半分以下になった人はガルカネズマブで約62人、 リメゲパントで約61人というイメージです。

片頭痛は実際に月何日くらい減った?

片頭痛をお持ちの方にとっては、 「何%の人に効いたか」だけでなく、 実際に月の片頭痛日数が何日減ったのかも重要です。

治療開始前の月間の片頭痛日数はエムガルティを使った方、ナルティークを使った方とも平均約8.4日でした。 治療後の減少日数は次のようになりました1)

治療後エムガルティナルティーク
1か月-4.3日-3.8日
2か月-4.8日-4.4日
3か月-5.1日-4.9日

3か月後には、どちらの治療でも平均して 月5日前後、片頭痛の日数が減少していました。

3か月間全体でみると、 エムガルティでは-4.8日、 ナルティークでは-4.4日でした。

数値上はエムガルティの方が少し大きく減っています。 しかし、この研究では最初に設定された主要評価項目で有意差が認められなかったため、 副次評価項目の数字だけを使って 「エムガルティの方が優れている」 と結論することはできません。

頭痛日数の減少が「62% vs 61%」なら、2つの薬は同じ効果なの?

ここはこの論文を読むうえで、とても大切なポイントです。

「62%と61%だから、2つの薬の効果は同じだ」と断定することはできません。

この研究は、2つの薬が同じ効果であることを証明する「同等性試験」ではありません。 研究の目的は、 エムガルティがナルティークより優れているかどうか を調べることでした。

その結果、エムガルティの優越性は証明されませんでした。

したがって、この研究の最も正確な解釈は、

「エムガルティがナルティークより片頭痛を抑える効果が高いことは、この直接比較試験では示されなかった」

となります。

「完全に同じ」と証明されたのではなく、 今回の研究では明確な優劣がつかなかった と考えるのがよいでしょう。

片頭痛が75%以上改善した人、片頭痛がなくなった人は?

研究では、さらに大きく改善した患者さんについても調べています。

改善の程度エムガルティナルティーク
50%以上減少62%61%
75%以上減少37%33%
100%減少18%15%

数値上はいずれもエムガルティが少し高くなっています1)

ただし、主要評価項目で優越性が示されなかったため、 「ガルカネズマブの方が75%改善や100%改善を得やすい」と、この数字だけから判断することはできません。

頭痛薬を使う日や生活への影響はどうだった?

片頭痛の予防治療では、 頭痛の日数だけでなく、 発作時の薬を飲む回数や、仕事・家事・日常生活への影響 も大切です。

急性期治療薬を使用した片頭痛日数は3か月間平均で、

  • エムガルティ:-4.0日
  • ナルティーク:-3.5日

でした1)

また、片頭痛によって日常生活がどの程度制限されるかを評価するMSQ RF-Rスコアも、 3か月後には両群で改善していました。

一方で、ここについても同じ注意が必要です。 主要評価項目でエムガルティの優越性が認められなかったため、 こうした副次評価項目だけから 「生活への影響についてはガルカネズマブの方が優れている」 と断定することはできません。

他の研究でも「飲み薬と注射は同じくらい」なの?

ここまで見ると、 「それならCGRP抗体薬とゲパントの効果はほとんど同じなのでは?」 と思うかもしれません。

しかし、他の比較研究まで見ると、結果は必ずしも完全には一致していません。

リメゲパントとCGRP抗体薬を間接比較した研究

Popoffらは2021年に、 ナルティークとエムガルティ、アイモビークⓇ(エレヌマブ:以降アイモビーク)を マッチング調整間接比較(MAIC)という方法で比較しました2)

12週間の月間片頭痛日数について、リメゲパントとエムガルティ、アイモビークとの間に統計学的な有意差は認められませんでした。

ただし、これは両薬を同じ臨床試験内で直接比較した研究ではなく、 異なる研究に参加した患者背景を統計学的に調整した間接比較です。

別の間接比較ではアイモビークの方が片頭痛日数を多く減らした

一方、Mahonらが2024年に報告した別のMAICでは、 アイモビークとナルティークを比較したところ、異なる結果が示されました3)

3か月後の月間片頭痛日数はナルティークと比較して、

  • エレヌマブ70mg:さらに0.90日減少
  • エレヌマブ140mg:さらに1.28日減少

し、統計学的にも有意でした。

つまり、一部の間接比較ではCGRP抗体薬の方が優れる可能性も示されています。

ただし、こちらも直接比較RCTではありません。 比較方法や対象患者の違いによって結果が変わる可能性があります。

別のゲパント「アトゲパント」とCGRP抗体薬を比較した研究

Ailaniらは2024年に、 経口ゲパントのアトゲパントと複数のCGRP抗体薬について、 50%以上片頭痛日数が減るためのNNT(治療必要数)を間接的に比較しました4)

治療NNT
アトゲパント60mg4.2
ガルカネズマブ120mg4.9
エレヌマブ140mg5.0
フレマネズマブ225mg5.0
エプチネズマブ300mg5.1

アトゲパントのNNTは数値上低くなりましたが、 信用区間は重なっており、 CGRP抗体薬との統計学的に明確な差は示されませんでした。

この研究からも、 「飲み薬のゲパントだから注射薬より効果が弱い」と単純には言えない ことが示唆されます。

なぜ研究によって結果が少し違うの?

今回紹介した研究には、大きく分けて2種類があります。

Schwedtらの研究は、 同じ臨床試験の中でガルカネズマブとリメゲパントを直接比較したランダム化比較試験 です。

一方、Popoffら、Mahonら、Ailaniらの研究は、 それぞれ異なる臨床試験のデータを統計学的に組み合わせて比較した研究です。

間接比較は、直接比較試験が少ない場合には重要な情報になりますが、 患者背景、研究デザイン、プラセボ効果などの違いを完全に取り除くことはできません。

そのため、 直接比較試験と間接比較研究の結果が少し異なること自体は不思議ではありません。

今回の直接比較試験をすべての片頭痛患者さんに当てはめてよい?

今回のSchwedtらの研究には、いくつか重要な限界があります。

まず、対象は月4~14日の片頭痛がある反復性片頭痛でした。 1か月に15日以上頭痛が起こる慢性片頭痛の患者さんは対象になっていません。

さらに、参加者の84.1%は、それまで片頭痛予防薬を使用したことがない患者さんでした。 1種類以上の予防薬が効かなかった患者さんは11%でした。

したがって、 複数の片頭痛予防薬を試しても十分な効果が得られなかった患者さんでも 同じ結果になるかどうかは、この研究だけでは分かりません。

また、比較期間は3か月です。 半年、1年、それ以上の長期治療における違いを比較した研究ではありません。

結局、エムガルティ注射とナルティークの内服はどちらが効く?

現在の研究から言えることを整理します。

  • エムガルティとナルティークを直接比較した試験では、 50%以上改善した患者は62% vs 61%でした。
  • 3か月後の月間片頭痛日数は、 -5.1日 vs -4.9日でした。
  • エムガルティがナルティークより優れていることは示されませんでした。
  • ただし、2つの薬が「完全に同じ効果」と証明されたわけではありません。
  • 別の間接比較では、CGRP抗体薬がリメゲパントより片頭痛日数を多く減らしたという研究もあります。
  • 一方、別のゲパントであるアトゲパントについては、CGRP抗体薬と比較可能な予防効果が報告されています。

これらを総合すると、

「CGRP注射薬だからゲパントの飲み薬より必ず強く効く」 あるいは 「飲み薬だから注射より効果が弱い」 とは、現在の研究からは単純には言えません。

一方で、実際の治療では「どちらが平均的によく効くか」だけで薬を選ぶわけではありません。

注射と内服のどちらが続けやすいか、 効果が現れるまでの期間、 副作用、 一緒に使用している薬、 発作時の治療をどうするかなども重要です。

「効果に大きな差がないのであれば、自分には注射と飲み薬のどちらが合っているのか?」

次回は、実際の片頭痛患者さんを対象としたアンケート調査も参考にしながら、 「CGRP注射薬とゲパントの飲み薬を、何を基準に選べばよいのか」 について解説します。

参考文献

  1. Schwedt TJ, Myers Oakes TM, Martinez JM, Vargas BB, Pandey H, Pearlman EM, et al. Comparing the efficacy and safety of galcanezumab versus rimegepant for prevention of episodic migraine: results from a randomized, controlled clinical trial. Neurol Ther. 2024;13:85-105. doi:10.1007/s40120-023-00562-w.
  2. Popoff E, Johnston K, Croop R, Thiry A, Harris L, Powell L, et al. Matching-adjusted indirect comparisons of oral rimegepant versus placebo, erenumab, and galcanezumab examining monthly migraine days and health-related quality of life in the treatment of migraine. Headache. 2021;61(6):906-915. doi:10.1111/head.14128.
  3. Mahon R, Tiwari S, Koch M, Ferraris M, Betts KA, Wang Y, et al. Comparative effectiveness of erenumab versus rimegepant for migraine prevention using matching-adjusted indirect comparison. J Comp Eff Res. 2024:e230122. doi:10.57264/cer-2023-0122.
  4. Ailani J, Lalla A, Halker Singh RB, Holle-Lee D, Nagy K, Kelton K, et al. Benefit-risk assessment based on number needed to treat and number needed to harm: atogepant vs calcitonin gene-related peptide monoclonal antibodies. Cephalalgia. 2024;44(11):1-11. doi:10.1177/03331024241299377.
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