「腕が上がらない」「夜、肩がズキズキして眠れない」
40〜60代に多いこの症状、いわゆる五十肩(肩関節周囲炎)かもしれません。
五十肩は自然に治ると思われがちですが、実際には適切な時期に適切な治療を行うことで回復が大きく変わることが分かっています。本稿では、腱板(ローテーターカフ)の働きと最新治療を、医療機関の視点から解説します。
1.五十肩と腱板(ローテーターカフ)の深い関係
肩関節は人体で最も可動域が広い関節です。その安定性を支えているのが「腱板」です。
腱板を構成する4筋
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
- 肩甲下筋
これらは上腕骨頭を関節窩に引き寄せ、肩の動きを安定させます。
Yamamotoらの疫学研究では、無症候性の腱板断裂が一定割合存在することが報告されており、腱板機能の破綻が肩痛の重要因子であることが示されています¹)。
不良姿勢が引き起こす悪循環
デスクワークやスマートフォン操作により、
- 猫背姿勢
- 肩甲骨前傾
- 巻き肩
が続くと、腱板が正常に働きにくくなります。
その結果、
腱板への過負荷 → 微小損傷 → 炎症 → 痛み → 動かさない → 拘縮
という悪循環が生じます。
五十肩の経過と治療戦略
五十肩は一般的に3期に分かれます。
五十肩の病期と治療方針
| 病期 | 主な症状 | 治療のポイント |
|---|---|---|
| 炎症期 | 強い痛み・夜間痛 | 炎症を抑える(注射・内服) |
| 拘縮期 | 動かない・固い | 可動域改善リハビリ |
| 回復期 | 徐々に改善 | 正しい運動習慣の確立 |
炎症期は“痛みを我慢しない”
強い痛みが続くと睡眠障害をきたし、回復を妨げます。
Buchbinderらのシステマティックレビューでは、ステロイド関節内注射は短期的な疼痛改善に有効であることが示されています²)。
炎症が強い時期に無理な運動を行うと悪化するため、
- まず炎症を鎮める
- 痛みを軽減する
- 睡眠を確保する
ことが重要です。
拘縮期に重要な“肩甲骨と腱板の再教育”
痛みが落ち着いても、関節は固くなっています。
この時期は「ただ動かす」のではなく、
- 肩甲骨の安定化
- 腱板の協調運動
- 正しい姿勢制御
を意識したリハビリが必要です。
誤ったフォームでのトレーニングは、逆に腱板に負担をかけます。
体外衝撃波(ESWT)という選択肢
Ioppoloらのレビューでは、体外衝撃波治療は疼痛軽減と機能改善に寄与する可能性が示されています³)。
特徴:
- 非侵襲的
- 外来で可能
- 副作用が少ない
特に慢性化した肩痛に対して有効と考えられています。
当院では筋肉の強い緊張収縮の痛みに対して使用しています。
VRリハビリテーションの可能性
近年注目されているのがVRを用いた運動療法です。

Gumaaらのメタアナリシスでは、VRリハビリは上肢機能改善に有効と報告されています⁴)。
VRの利点:
- 没入感による運動学習促進
- モチベーション向上
- 正確な運動フィードバック
当院併設施設「ReHAB」では、mediVRカグラを活用し、
腱板の協調運動を“楽しく・正確に”再教育することができます。
五十肩は「放置」しない
「年齢のせいだから仕方ない」と考え、
- 痛みを我慢する
- 動かさない
- 自己流でストレッチする
これらは回復を遅らせる可能性があります。
早期に炎症を抑え、
適切な時期にリハビリを開始することで、
✔ 可動域の回復
✔ 慢性痛の予防
✔ 再発予防
につながります。
まとめ
五十肩は単なる加齢現象ではなく、
腱板機能と肩甲骨運動の破綻が関与する機能障害です。
治療の基本は:
- 炎症期:痛みをしっかり取る
- 拘縮期:正しいリハビリ
- 回復期:再発予防の運動習慣
肩の違和感を感じたら、早めに専門医へご相談ください。
適切な治療で、肩は取り戻せます。
参考文献
- Yamamoto A, et al. Prevalence and risk factors of a rotator cuff tear in the general population. J Shoulder Elbow Surg. 2010;19(1):116-120.
- Buchbinder R, et al. Efficacy and safety of corticosteroid injections for shoulder pain: a systematic review and meta-analysis. Ann Intern Med. 2003;138(8):659-672.
- Ioppolo F, et al. Clinical application of shock wave therapy in musculoskeletal disorders: a systematic review. Br Med Bull. 2014;110(1):179-208.
- Gumaa M, et al. Effectiveness of virtual reality-based rehabilitation on upper limb function in patients with shoulder disorders: systematic review and meta-analysis. Physiother Theory Pract. 2021;37(10):1099-1114.
※肩の強い痛みや可動域制限がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
