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五十肩で、いつ腕は上がるようになるのか?|進行ステージと拘縮期の治療

五十肩(凍結肩)は「放っておけば治る」と言われてきました。しかし最新の研究では、保存療法のみで治療した患者の50%が7年後も痛みや可動域制限を残すというデータが報告されています。特に「拘縮期」は、適切な介入のタイミングを逃すと長期化しやすい時期です。このコラムでは、拘縮期に何が起きているのか、そして今どのような治療の選択肢があるのかをわかりやすくご説明します。

五十肩の3つのステージ

五十肩・凍結肩は、一般的に以下の3つのステージをたどります。

STAGE 1 炎症期(疼痛期)1~2ヶ月

安静時痛・夜間痛が強く、動かすと激しく痛む。関節包に強い炎症が起きている時期。

STAGE 2 拘縮期 6ヶ月~2年

痛みは落ち着いてきたが、関節包の線維化・癒着が進み肩がどんどん動かなくなる。

STAGE 3 回復期(解氷期) 数ヶ月〜数年

自然に可動域が戻ってくる時期。ただし完全回復しないケースも多いと報告されています。

拘縮期では「痛みが減ったから良くなった」と感じやすいですが、実は関節包の癒着・線維化が最も進行しやすいタイミングです。この時期に適切な治療を行うことで、回復期を早め、後遺症(可動域制限の残存)を防ぐことができます。炎症期は関節内外の炎症があるため痛みがおこります。拘縮期は関節の可動性が低下するため、動作時にある程度の範囲以上動かすと痛みがでてきます。

拘縮期に行われる主な治療

関節腔内注射(ヒアルロン酸・ステロイド)

拘縮期においても関節腔内への注射は有効です。ヒアルロン酸は関節の潤滑を改善し、摩擦による痛みを和らげる効果があります。当院では超音波ガイド下で正確に関節腔内へ注入しています。

肩甲上神経ブロック・腋窩神経ブロック

関節内注射だけでは十分な除痛が得られない場合、肩関節を支配する神経へのブロック注射が有効です。関節内注射だけでは十分な除痛が得られない場合、肩関節を支配する神経へのブロック注射を組み合わせることがあります。肩甲上神経ブロック腋窩神経ブロックは、超音波ガイド下で肩関節周囲の痛みを効果的に和らげる方法です。除痛が得られることでリハビリや運動療法がスムーズに進むようになります。

  • 超音波ガイド下で正確に神経周囲へ注入(血管・神経損傷リスクを最小化)
  • 関節内注射と神経ブロック注射を組み合わせて疼痛コントロールを強化
  • 除痛により運動療法・リハビリの効果が高まる

サイレントマニピュレーション(超音波ガイド下神経ブロック徒手授動術)

保存療法で改善しない拘縮に対して、近年注目されているのがサイレントマニピュレーションです。超音波ガイド下に頸部の神経根(C5・C6・C7)をブロックして肩周囲を無痛にした後、徒手で関節包を剥がす処置です。全身麻酔不要で外来日帰り処置として行えるため、身体・経済的負担が大幅に少ない点が特徴です。

68例を対象とした確認的研究では、処置後6ヶ月でJOA肩スコアが58.4点から95点へ、前方挙上が90°から167.5°へと有意に改善しました(p<0.001)。さらに1,665肩という大規模コホート研究では、術後わずか1週間から可動域の有意な改善が得られ、3ヶ月後も効果が持続することが確認されています。1年後まで追跡した研究でも、可動域だけでなく処置を受けた後の満足度(DASHスコア・Shoulder 36)が高かったと報告されています。

  • 外来日帰り処置(全身麻酔不要)
  • 処置後翌日からリハビリ開始可能
  • 術後3ヶ月間のリハビリ継続が効果を定着させる

※ 糖尿病性凍結肩は特発性と比べて治療効果が劣りやすく、「別の疾患」として考える必要があるという報告があります。血糖コントロールの状態が予後に影響するため、事前の十分な説明と連携が重要です。

拡散型衝撃波治療(筋攣縮・トリガーポイントへのアプローチ)

拘縮期の肩では、関節包の問題だけでなく、長期にわたる疼痛・不動による筋肉の攣縮(スパズム)やトリガーポイント形成が可動域制限に大きく関与しています。棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋といったローテーターカフや、僧帽筋・肩甲挙筋などにかたい索状物(トリガーポイント)が形成されると、牽引痛や放散痛が生じ、運動療法の妨げになります。

拡散型体外衝撃波(RSWT)は、圧力波を筋肉の深部まで届けることでトリガーポイントを直接刺激・解消し、筋攣縮の緩和、局所の血流改善、疼痛閾値の上昇をもたらします。注射針を使わない非侵襲的な処置であり、関節内注射、神経ブロック注射やサイレントマニピュレーションと組み合わせることでリハビリの効率を高める補助的治療として活用できます。

  • 針を使わない非侵襲的処置
  • 棘上筋・僧帽筋など肩周囲の筋攣縮に直接アプローチ
  • 1回/1~2週の頻度で複数回の施行が一般的
  • 関節内注射・運動療法との併用で相乗効果

※拡散型衝撃波をご希望の方へ:十分な診察・評価・処置の時間が必要となるため、拡散型衝撃波治療をご希望の場合は予約診察料として3,000円(税込)がかかります。受診時にご相談ください。

セルフケア・リハビリテーション

どの治療を選んでも、日常的なセルフケアとリハビリテーションは欠かせません。サイレントマニピュレーションについての大規模研究でも、術後リハビリを行わなかった症例では1.2%に再拘縮が生じており、「処置を受ければ終わり」ではないことが示されています。

拘縮期に推奨されるセルフケア

  • 振り子運動(コドマン体操):前傾姿勢で腕の重みを利用してゆっくり円を描く。関節への負荷が少なく、拘縮初期から行える基本運動。
  • タオルを使った外旋ストレッチ:健側の手でタオル越しに患側をゆっくり外旋方向へ誘導。前方関節包の柔軟性回復に有効。
  • 壁での指上げ運動(ウォールウォーク):壁に指をあて少しずつ上方へ動かす。前方挙上可動域の回復を促す。
  • 温熱療法(入浴・ホットパック):運動前に十分温めることで組織の伸張性が高まり、ストレッチ効果を高める。
  • 無理のない範囲で毎日続ける:痛みが強い場合は無理せず、翌日に響かない程度の強度を守る。

※炎症が強い急性期には積極的なストレッチは逆効果になる場合があります。時期に応じた指導を受けることが重要です。

痛みが強すぎる方へ:もやもや血管という視点

適切な治療を続けているにもかかわらず、夜も眠れないほどの強い痛みが続く場合、通常の凍結肩とは異なるメカニズムが関与している可能性があります。それが「もやもや血管(病的新生血管)」です。

炎症が慢性化した組織には、本来存在しないはずの異常な細小血管が増殖することがあります。この新生血管には神経線維が一緒に入り込むため、通常の鎮痛処置では取り切れない強い痛みの原因となります。

動注治療という選択肢

もやもや血管に対して、微細な塞栓物質を注入して異常血管を選択的に閉塞させる動注治療があります。関節を切開しない低侵襲な処置であり、通常の保存療法では改善しない難治性の痛みに対して有効な場合があります。

※状態により効果が乏しい場合、病歴により実施ができない場合があります。

  • 関節を切開しないため、関節へのダメージなし
  • もやもや血管を選択的に閉塞し、痛みの原因に直接アプローチ
  • 現時点では保険適用外(自費診療):片側 27,500円(税込)

「リハビリをしているが痛みが取れない」「夜間痛がひどく眠れない」という方は、一度ご相談ください。

参考文献

  1. Miyatake K, Wakita R, Fujisawa T, et al. Satisfaction of patients with frozen shoulder following silent manipulation: a prospective observation study. Sci Rep. 2024;14:22409.
  2. Takahashi R, Iwahori Y, Kajita Y, et al. Clinical results and complications of shoulder manipulation under ultrasound-guided cervical nerve root block for frozen shoulder: a retrospective observational study. Pain Ther. 2019;8:111–120.
  3. Park K, Matsuzaki M, Okamoto M, Sakaki A, Ikuta F. Effect of manipulation technique using ultrasound-guided cervical nerve root block on range of motion at the shoulder joint in frozen shoulder: a retrospective study. J Exp Orthop. 2022;9:63.
  4. Ando A, Hamada J, Hagiwara Y, et al. Short-term clinical results of manipulation under ultrasound-guided brachial plexus block in patients with idiopathic frozen shoulder and diabetic secondary frozen shoulder. Open Orthop J. 2018;12:99–104.
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