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ヘバーデン結節はなぜ痛い?「変形」だけでは説明できない痛みのメカニズム

「指の第一関節が腫れて痛い」「最近、指先の関節が曲がってきた」
「病院でヘバーデン結節と言われたが、痛み止めと湿布で様子を見ているだけ」
「見た目の変形より、とにかく痛みをどうにかしたい」

こうしたお悩みの方は少なくありません。

ヘバーデン結節は、指先から数えて最初の関節(DIP関節:遠位指節間関節)に起こる変形性関節症です。「骨が変形しているから仕方がない」と諦めている方も多いのですが、近年の研究では、痛みの強さは骨の変形の程度だけでは説明できず、関節内の炎症(滑膜炎)や血流の変化が深く関わっていることがわかってきました。

今回は、「なぜ変形するのか」ではなく「なぜ痛むのか」という視点から、最新の研究知見をもとに解説します。

ヘバーデン結節とは

指先から一番目の関節(DIP関節)に生じる変形性関節症で、関節の腫れ・骨の出っ張り・指の曲がりが特徴です。一つ手前のPIP関節に同様の変化が起こったものは「ブシャール結節」と呼ばれます。

主な症状は、DIP関節の痛み・腫れ・赤み、曲げたときの痛み、関節のこわばり、指の変形、そして「物をつまむ」「ふたを開ける」といった動作のしにくさです。

興味深いのは症状の個人差です。かなり変形していてもほとんど痛まない方もいれば、見た目の変形は軽度でも強い痛みを訴える方もいます。このことが、ヘバーデン結節の痛みを理解するうえで重要な手がかりになります。

「軟骨がすり減っているから痛い」だけでは説明できない

変形性関節症というと、「軟骨がすり減る→骨同士がぶつかる→痛くなる」というイメージを持たれがちです。もちろん軟骨の変性や骨棘はヘバーデン結節の重要な特徴ですが、現在では変形性関節症は「軟骨の摩耗」だけでなく、関節全体にさまざまな変化が生じる病気として捉えられるようになっています。

その代表が「滑膜炎」です。滑膜は関節を包む組織で、変形性関節症では、ここに炎症が起こることがあり、この炎症の強さが痛みと関係している可能性が研究で示されています。

290人のデータが示す「炎症が強い関節ほど痛い」という報告

ノルウェーで行われたNor-Hand研究では、手指変形性関節症を持つ290人を対象に、指の関節を超音波(エコー)で詳細に評価しました。調べられたのは、①滑膜炎、②Power Doppler(パワードプラ)による血流信号、③関節の圧痛の3点です。

その結果、超音波で確認される滑膜炎が強い関節ほど、圧痛がある可能性が高いことがわかりました。特に中等度~高度の滑膜炎が認められた指節間関節では、滑膜炎のない関節に比べて圧痛のオッズが約3.2倍にのぼりました。血流信号(Power Doppler陽性所見)についても、関節痛との関連が確認されています。

つまり、「レントゲン上どれだけ骨が変形しているか」だけでなく、「その関節で今どれだけ炎症が起きているか」が痛みを左右しているのです。

「血流が見える」ことの意味

Power Dopplerは、通常の超音波検査ではわからない組織内の血流の増加を可視化できる検査法です。手指変形性関節症の国際的な超音波評価基準でも、滑膜肥厚・関節液貯留・Power Doppler信号は、炎症性病変を評価するための重要な項目とされています。

ただし誤解のないように補足すると、「血流が見える=その血管だけが痛みの原因」というわけではありません。ヘバーデン結節の痛みには、滑膜炎、骨の変化、関節包、周囲組織、末梢神経など複数の要因が複雑に関わっており、血流の変化はその中の一つです。

だから「変形の強さ」と「痛みの強さ」は比例しない

これは診療のうえでも非常に重要な視点です。「こんなに指が曲がっているのだから痛くて当然」と思われがちですが、実際にはかなり変形していても痛みを感じない方もいらっしゃいます。逆に「レントゲンではそれほどひどくないと言われたのに、なぜこんなに痛いのか」と訴えるヘバーデン結節の方も珍しくありません。

この違いの背景には、関節の構造的な変形と、今まさに起きている炎症は必ずしも一致しないという事実があります。ですから、診察では、「どれだけ関節が曲がっているか」だけでなく、「今、その関節で何が起きているか」を見極める視点が欠かせません。

標準的な治療法

国際リウマチ学会(EULAR)の手指変形性関節症に関する推奨では、疾患についての十分な説明、関節への負担を軽減する動作の工夫、運動療法、装具療法などを組み合わせた治療が推奨されています。

薬物療法では、全身への影響が比較的少ない外用NSAIDs(消炎鎮痛薬)が第一選択とされ、必要に応じて短期間の内服NSAIDsを併用することもあります。痛みの強い関節に限り、症例を選んで関節内ステロイド注射を検討する場合もあります。

それでも痛みが取れない場合――新しい治療研究の動き

保存的治療を続けても、「物をつまむだけで痛い」「軽く触れただけでも痛む」といった強い痛みが残ることがあります。

こうした治りにくいヘバーデン結節に対して、近年、痛みのある関節に関係する血管をターゲットにした新しい治療の研究が進められています。

具体的には、手首の動脈から薬剤を流したり、細いカテーテルを使って炎症部位に関係する血流を減らしたりする方法です。2023~2024年に報告された研究では、こうした治療を受けた患者さんでヘバーデン結節の痛みが軽くなったことが報告されています。

ただし、まだ研究段階の治療であり、有効性が確立しているわけではありません。

この新しい治療がなぜ痛みに効く可能性があるのか、実際にどの程度の効果が報告されているのかについては、次回のコラムで詳しくご紹介します。

変形と痛みは、分けて考える

「この曲がった指は元に戻りますか」とよく聞かれます。一度生じた骨の変形そのものを、薬や注射だけで元の形に戻すことは困難です。

しかし、「変形が治らないこと」と「痛みが治らないこと」は同じではありません。近年の研究は、手指変形性関節症の痛みに滑膜炎などの炎症性変化が関わっていることを示しています。だからこそ「変形しているから仕方がない」で終わらせず、痛みの原因を丁寧に評価し、その方の状態に応じた治療法を選択することが大切だと私たちは考えています。

指の変形より「痛み」でお困りの方へ

ヘバーデン結節そのものは命に関わる病気ではありません。しかし指は毎日使うものです。料理をする、ボタンを留める、スマートフォンを操作する、ペットボトルを開ける――小さな関節の痛みでも、毎日繰り返されれば生活への負担は決して小さくありません。

また、「第一関節の痛み=すべてヘバーデン結節」とは限らず、関節リウマチ、痛風など他の疾患との鑑別が必要な場合もあります。まず大切なのは、「変形があるかどうか」だけでなく、「なぜ今この指が痛むのか」を評価することです。

保存的治療で十分に改善しない痛みに対しては、これまでとは異なる治療の選択肢についても研究が進み始めています。指の痛みでお困りの方は、一度ご相談ください。

[ヘバーデン結節の動注治療について詳しく見る →]

※最新の動注治療について説明します。動注治療は指の骨の変形そのものを元に戻す治療ではありません。治療の適応については、症状や診察所見などを確認したうえで判断します。

参考文献

  1. Fjellstad CM, Mathiessen A, Slatkowsky-Christensen B, Kvien TK, Hammer HB, Haugen IK. Associations between ultrasound-detected synovitis, pain, and function in interphalangeal and thumb base osteoarthritis: data from the Nor-Hand cohort. Arthritis Care Res (Hoboken). 2020;72(11):1530-1535.
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  3. Gløersen M, Pettersen PS, Neogi T, et al. Associations of pain sensitisation with tender and painful joint counts in people with hand osteoarthritis: results from the Nor-Hand study. RMD Open. 2022;8(1):e001774.
  4. Kloppenburg M, Kroon FPB, Blanco FJ, Doherty M, Dziedzic KS, Greibrokk E, et al. 2018 update of the EULAR recommendations for the management of hand osteoarthritis. Ann Rheum Dis. 2019;78(1):16-24.
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