ヘバーデン結節は、指の第一関節(DIP関節)に起こる変形性関節症です。
「指が痛くてペットボトルのふたが開けられない」
「ペンを持っていると指が痛くなる」
「料理やボタンを留める動作がつらい」
このような症状がみられることがあります。
現在のところ、変形してしまった関節を元通りにする治療は手術だけです。そのため治療では、痛みを抑えること、指への負担を減らすこと、手指の機能をできるだけ維持することが大切になります。
治療というと薬や注射をイメージしがちですが、まず試していただきたいのは「指にかかる負担を減らす工夫」です。
道具を工夫して、指の関節への負担を減らす
ヘバーデン結節では、指先で強く「つまむ」「ひねる」「握る」といった動作で痛みが出やすくなります。
そこで、日常生活では道具を上手に利用して、痛む関節に集中する力を減らしてみましょう。
ペットボトルのふたが開けにくい
ペットボトルのふたを開ける動作では、指先でふたを強くつまみながら回す必要があります。
痛みがある場合には、ペットボトルオープナーを利用すると、少ない力でふたを回しやすくなります。100均ショップなどでもみかけるので、いくつか持っていると便利だと思います。

ペンを持つと指が痛い
細いボールペンや鉛筆は、指先で強く握る必要があります。
ペングリップなどを取り付けて持つ部分を太くすると、少ない力でペンを保持できるようになります。
最初から太めに設計されたペンを使用する方法もあります。

瓶のふたを開けるのがつらい
ジャムや調味料などの瓶のふたも、強く握ってひねる必要があります。
瓶オープナーや滑り止めシートを利用すると、必要な握力を減らすことができます。

包丁や調理器具を握ると痛い
細い柄の調理器具よりも、グリップの太い包丁やピーラー、調理器具を選ぶと、指先だけに力が集中しにくくなります。
大切なのは、
「痛い指を使わない」のではなく、「道具を工夫して少ない力で同じ動作をする」
という考え方です。
指の動きを保つための運動
痛みがあると指を動かさなくなりがちですが、長期間動かさない状態が続くと、関節がさらに動かしにくくなることがあります。
手指OAでは、関節の動きを保つ運動や筋力トレーニングが推奨されています。
ただし、強い痛みや腫れがあるときに無理に行う必要はありません。
運動1 手をゆっくり握る
手を開いた状態から、ゆっくりと指を曲げて握ります。
そして、再びゆっくり指を伸ばします。
強く握り込む必要はありません。痛みのない範囲で行います。
運動2 MP関節を伸ばして、PIP・DIP関節を曲げる
指の付け根(MP関節)は伸ばした状態を保ち、
第二関節(PIP関節)と第一関節(DIP関節)を曲げます。
いわゆる「フック」のような形です。
ゆっくり曲げて、ゆっくり戻します。
運動3 MP関節を曲げて、PIP・DIP関節を伸ばす
今度は指の付け根(MP関節)を曲げ、
PIP関節とDIP関節はできるだけ伸ばします。
指全体を一度に握るだけでなく、それぞれの関節を分けて動かすことがポイントです。
ただし、これらの運動で痛みが明らかに増える場合には中止してください。
「痛くても頑張る」運動ではありません。
指のマッサージ
指の腫れやむくみが気になるときは、指先から指の付け根に向かって、反対の手でやさしく、さするようにマッサージします。
強く揉む必要はありません。
特に痛みのある第一関節(DIP関節)は強く押さず、軽く触れる程度にしましょう。赤みや熱感、強い痛みがある場合は無理に行わないでください。
痛む関節を保護する方法
日常生活でどうしても痛い指を使わなければならない場合には、関節を一時的に保護する方法もあります。
メクリンを簡易的な指サポーターとして利用
ヘバーデン結節では、痛みのある第一関節(DIP関節)をテーピングやサポーターで保護すると、日常生活で指を使いやすく感じることがあります。
ただ、「テーピングを毎回巻くのが面倒」「一般的な指サポーターでは大きすぎる」という方もいます。
そのような場合に、身近なものとしてメクリンなどのリング型指サックを、簡易的な指サポーターとして利用する方法もあります。
痛みのある第一関節の周囲に装着することで、関節を軽く覆って保護できます。着脱が簡単なので、水仕事など指をよく使う場合に装着するという使い方もできます。

テーピング
痛みのあるDIP関節をテープで軽く固定して、関節が大きく動きすぎないようにする方法もあります。
特に家事や仕事など、「この動作をすると痛い」と分かっている場合には、その時間だけ使用するという方法もあります。
あくまで痛む関節への負担を減らすための補助的な方法と考えます。

④ それでも痛ければ、痛み止めを使います
生活上の工夫や運動を行っても痛みが続く場合には、薬による治療を組み合わせます。
まずは塗り薬・湿布
手指の変形性関節症では、NSAIDsと呼ばれる消炎鎮痛薬の塗り薬や湿布が選択肢の一つです。
痛む関節が限られている場合には、内服薬よりも全身への影響が少ない外用薬から使用することが推奨されています。
痛みが強ければ内服薬
外用薬だけでは痛みが十分に抑えられない場合には、NSAIDsなどの内服薬を使用することがあります。
ただしNSAIDsは、胃腸障害や腎機能への影響などがあるため、年齢や持病、他に服用している薬などを考慮して使用します。
長期間漫然と使用するのではなく、必要な時期に必要最小限使用することが基本です。
炎症が強い場合には関節内注射を検討することも
関節が腫れて炎症が強く、痛みが続いている場合には、症例によってステロイドなどの関節内注射を検討することがあります。
ただし、すべてのヘバーデン結節に行う治療ではありません。
エクオール(エクエル)はどうでしょうか?
ヘバーデン結節は特に中高年の女性に多く、更年期前後に手指の痛みや腫れ、こわばりを訴える方も少なくありません。
そのため、女性ホルモン(エストロゲン)の低下と手指の症状との関係が注目されています。
エクオールは、大豆イソフラボンから腸内細菌によって作られる成分で、エストロゲンに似た作用を持っています。
エクオールを含む食品・サプリメントとして「エクエル」などがあります。
更年期前後の女性で手指の痛みやこわばりがある場合に利用されることがありますが、ここには注意が必要です。
エクオールによってヘバーデン結節の変形を予防できる、あるいは変形した関節を元に戻せることが確立しているわけではありません。
現時点では、ヘバーデン結節の標準治療として確立された薬物療法とは分けて考える必要があります。
漢方薬は効果がありますか?
漢方薬を処方することはあります。
ヘバーデン結節では、痛み止めだけでなく、症状や体質に合わせて漢方薬を使用することもあります。
漢方治療では、「ヘバーデン結節だから全員に同じ漢方薬」という考え方ではなく、
- 関節の腫れや痛みが強い
- 手指が冷えると痛みが悪化する
- 朝に手指がこわばる
- むくみを伴う
- 更年期前後から手指の症状が目立つようになった
など、手指以外の症状も含めて処方を検討します。
痛くて運動も日常生活の工夫もできない場合
ここまで紹介した方法は、ある程度指を動かせることが前提です。
しかし実際には、
「物が触れるだけでも痛い」
「ペットボトルのふたを開けられない」
「痛くて指の運動どころではない」
というほど強い痛みが続く方もいらっしゃいます。
保存的治療を続けても十分に改善しない手指の変形性関節症の痛みに対して、近年研究されている治療の一つが動注治療(経動脈的治療)です。
慢性的な炎症が続いている場所では、異常な血流の増加が痛みと関連している可能性が指摘されています。
動注治療では、こうした炎症部位への異常な血流を治療標的とすることが研究されています。
手指の変形性関節症に対しても臨床研究が報告され、治療後に痛みが改善した患者さんがいることが報告されています。
「ヘバーデン結節があるから動注治療をする」のではなく、保存的治療を行っても強い痛みが続き、日常生活に支障がある場合に検討する治療の選択肢の一つ
と考えるのが適切です。
まずは「痛みを減らして、できることを増やす」ことから
ヘバーデン結節の治療には、一つだけの正解があるわけではありません。
まず、
道具を工夫して指への負担を減らす
↓
痛みのない範囲で指を動かす
↓
指サックやテーピングなどで関節を保護する
↓
必要に応じて塗り薬や内服薬、関節の痛みや腫れが強ければ動注治療
という順番で考えてみるとよいでしょう。
ペインクリニック芦屋ピッコロ診療所は西宮市、芦屋市、神戸市東灘区地域でヘバーデン結節に対して、動注治療を含めた総合的な治療を行っています。
※関節の骨の変形に目が行きますが、関節の変形だけがヘバーデン結節の痛みの原因ではありません。
※最新の動注治療について説明します。動注治療は指の骨の変形そのものを元に戻す治療ではありません。治療の適応については、症状や診察所見などを確認したうえで判断します。

