「肩こりがひどくて、もう何年も悩んでいます。漢方は効きますか?」
「片頭痛に漢方薬は使えますか?」
「坐骨神経痛で足がしびれて困っています。西洋薬以外に何かありませんか?」
漢方薬というと、風邪や胃腸症状に使うイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし実際には、頭痛・肩こり・首こり・腰痛・関節痛・神経痛などの慢性的な痛みに対しても、漢方薬が有効な選択肢となることがあります。
もちろん、頚椎ヘルニアや脊柱管狭窄症そのものを漢方薬で根本的に治すわけではありません。しかし、以下のような場合には漢方薬が助けになることがあります。
- 冷えが強く、冬や冷房で症状が悪化する
- 筋肉のこわばりがとれない
- 痛みが慢性化して長引いている
- 西洋薬だけでは改善が不十分
- 薬の副作用が気になる
今回は慢性疼痛・神経障害性疼痛における漢方薬の考え方と具体的な処方について解説します。
| 【この記事でわかること】 ・頭痛・肩こり・首こり・腰痛・神経痛に漢方が使える理由 ・もやもや血管(異常新生血管)と漢方薬の関係 ・冷えと慢性痛のつながり ・神経障害性疼痛と漢方薬の相性 |
西洋医学と漢方医学の違い
例えば腰椎椎間板ヘルニアの場合、西洋医学では「神経が圧迫されることで痛みやしびれが起こる」と考えます。そのため、消炎鎮痛薬・プレガバリン・ミロガバリン・神経ブロック・手術など、原因と症状に直接アプローチします。
一方で漢方では、
- なぜ痛みが長引いているのか
- どのような体質が背景にあるのか
- 体の中でどんな「流れの滞り・流れの不足」が起きているのか
という視点を重視します。
西洋医学と漢方医学は対立するものではありません。それぞれ異なる角度から患者さんをみており、組み合わせることでより良い結果が得られることがあります。
では、漢方が指摘する「流れの滞り」とは、現代医学的に見ると体の中で具体的に何が起きているのでしょうか。近年、慢性痛が長引く仕組みの一つとして、痛みの部位に異常な血管が増えてしまう現象が注目されており、これが漢方の考え方と現代医学の知見が重なり合う、興味深い接点になっています。
慢性痛の現場で注目される「もやもや血管」と漢方薬
近年の研究で、慢性的な痛みが生じている部位には「もやもや血管」(病的な新生血管)が多く見られることが明らかになっています。
もやもや血管とは、炎症や組織ダメージをきっかけに新たに増えてしまった、構造的に未熟な血管のことです。本来ならば炎症が落ち着くと消えるはずだった血管が残存してしまい、炎症物質や発痛物質を周囲に届け続けること、血管が増殖する際に神経も一緒に伸びるという身体のルールにより、余分な神経まで増えてしまうことでしつこい痛みの原因になると考えられています。
| 【もやもや血管が関係しやすい慢性痛】 ・肩こり・首こり(僧帽筋・頚椎周囲) ・膝・股関節の変形性関節症 ・腱板炎・テニス肘などの腱・靭帯の慢性障害 ・腰痛 ・頭痛(緊張型・片頭痛の混在型) |

漢方薬はこのもやもや血管に対して、直接的に血管を塞ぐわけではありませんが、末梢の血液循環を改善し、炎症を鎮め、組織修復の環境を整える働きがあると考えられます。「瘀血(おけつ)」と呼ばれる血流の滞りを改善するという漢方の概念は、現代医学的にはこのもやもや血管にまつわる病態とも通じる部分があります。
冷えと慢性痛の深い関係
慢性的な痛みを抱える患者さんの中には、
- 「冬になると悪化する」
- 「エアコンが効いた部屋で痛みが強くなる」
- 「手足が冷たく、なかなか温まらない」
という方が少なくありません。

漢方では古くから「冷えと痛みは切り離せない」とされてきました。現代医学的にも、以下のような流れで説明できます。
そのため慢性痛の漢方治療では、「痛みそのもの」だけでなく「冷えの改善」にも積極的にアプローチします。
神経障害性疼痛と漢方薬の相性
神経障害性疼痛とは、神経そのものの障害によって起こる痛みです。
- 頚椎症性神経根症(首・腕のしびれ・痛み)
- 坐骨神経痛(腰・殿部・下肢のしびれ・痛み)
- 帯状疱疹後神経痛
- 糖尿病性神経障害
現在の治療の中心はプレガバリン(リリカ)・ミロガバリン(タリージェ)・デュロキセチンなどの西洋薬ですが、実際の診療では「しびれ痛みは少し改善したが、しびれが残る」「眠気・ふらつきの副作用がつらい」という患者さんも少なくありません。
このような場合に漢方薬を併用することで、
- 神経の栄養・修復をサポートする
- 末梢の血流改善により神経周囲の環境を整える
- 冷えを改善して症状の増悪因子を取り除く
といった効果が期待できることがあります。ただし、すべての神経障害性疼痛に有効というわけではなく、患者さんの体質・症状に応じた判断が必要です。
漢方薬だけで治療するの?
「漢方薬だけにこだわる必要はありません」これが答えです。
当院では、
- 神経ブロック
- 西洋薬(消炎鎮痛薬・プレガバリンなど)
- 漢方薬
- セルフケア運動
を組み合わせながら治療を考えます。漢方薬はあくまで選択肢の一つであり、万能薬ではありません。しかし以下のような場合には、漢方薬が大きな助けになることがあります。
- 冷えが強く、西洋薬だけでは症状が安定しない
- 慢性化してもやもや血管が関係していると考えられる
- 副作用が心配で西洋薬の量を増やしにくい
- 体質が慢性痛の背景にある
まとめ
| ・頭痛・肩こり・首こり・腰痛・関節痛・神経痛などの慢性疼痛には、漢方薬が有効な選択肢になることがあります。 ・痛みの部位にはもやもや血管(異常新生血管)が多く見られることがあり、漢方薬の「瘀血を改善する」作用はこれと通じる面があります。 ・冷えは慢性痛を悪化させる大きな要因であり、漢方薬は冷えへのアプローチが得意です。 ・神経障害性疼痛(しびれ・神経痛)においても、西洋薬との併用で効果が期待できることがあります。 ・漢方薬は体質・症状に合わせて選ぶことが重要です。自己判断は避け、専門家に相談しましょう。 |
西洋医学と漢方医学はどちらが優れているという話ではありません。それぞれの長所を活かしながら、患者さん一人ひとりに合った治療を考えていくことが大切です。
ペインクリニック芦屋ピッコロ診療所は西宮市、芦屋市、神戸市東灘区地域で片頭痛をはじめとした慢性頭痛、頚椎椎間板ヘルニア、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、五十肩などに対する診療を行っています。

