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シングリックス®は帯状疱疹だけではなく「後遺症(帯状疱疹後神経痛)」も予防できるのでしょうか?

  • 約200万人を4年間追跡した、アメリカの大規模な研究による結果
  • 帯状疱疹ワクチン(シングリックス)を2回接種すると、帯状疱疹後神経痛(PHN)を87%予防できた
  • 帯状疱疹ワクチン(シングリックス)接種後に帯状疱疹を発症した場合でも、PHNのリスクは47%低下した
  • 帯状疱疹ワクチン(シングリックス)は目に症状が出る「帯状疱疹眼症(HZO)」も78%予防できた
  • 帯状疱疹ワクチン(シングリックス)1回接種(69%)より2回接種(87%)のほうが、明らかに効果が高い

帯状疱疹とは、どんな病気か

帯状疱疹は、子どもの頃に感染した水ぼうそうのウイルスが原因で起こる病気です。このウイルスは発症後も体内の神経に潜伏し続け、加齢や過労、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することがあります。皮膚に沿って発疹と強い痛みが現れるのが特徴です。

しかし、この病気の本当の厄介さは発疹そのものではありません。皮膚が治ったあとも、ピリピリ・ジンジンとした痛みだけが数ヶ月、時には数年にわたって残ることがあるのです。これを帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)と呼びます。この痛みに悩まされている患者さんが数多くいらっしゃいます。

なぜこれほど痛みが長引くのでしょうか? 

ウイルスが暴れる過程で皮膚の下を通る神経が損傷を受け、発疹が治癒したあとも、その傷ついた神経が誤った痛みの信号を送り続けてしまうためだと考えられています。衣類が軽く触れただけで激痛が走ったり、夜間の睡眠を妨げるほどの痛みが続いたりすることもあり、生活の質を大きく損ないます。だからこそ、そもそも帯状疱疹を発症させないことが重要になります。

臨床試験では効果が証明されていた

帯状疱疹ワクチン「シングリックス」は、2015年と2016年に行われた大規模な臨床試験(ZOE-50試験、ZOE-70試験)によって、帯状疱疹やPHNを高い確率で予防できることがすでに証明されており、世界的に広く使用されています。

ただし、これらの臨床試験は年齢や既往症などの条件を厳密にそろえた、いわば理想的な環境で実施されます。実際の医療現場には、複数の持病を抱える人、高齢の人、免疫抑制薬を使用している人など、試験には十分含まれていなかった方々が数多く存在します。そのため、「臨床試験で示された高い効果は、実際の診療現場でも本当に再現されるのか」という疑問が残されていました。

約200万人を対象とした大規模研究

「シングリックスの臨床試験で示された高い効果は、実際の診療現場でも本当に再現されるのか」

この疑問に答えたのが、2025年6月に発表されたZerboらの研究です。アメリカの医療データベースを用い、50歳以上の約200万人を対象に、2018年から2022年までの4年間にわたって追跡調査が行われました。対象者は50代から90代以上まで幅広い年代にわたっており、実際の診療現場に近い、多様な患者層のデータであることが特徴です。

対象者のうち約29%が2回接種を完了しており、追跡期間中に45,333人が帯状疱疹を発症しました。そのうち6.4%がPHNを、6.9%がHZO(帯状疱疹眼症)を発症しています。この研究では、年齢や持病、受診頻度など結果に影響しうる要因をそろえたうえで、ワクチン接種の有無による発症リスクを比較しています。こうした背景因子の調整は、観察データから実際の効果に近い数値を導き出すために欠かせない手法です。

神経痛の予防効果は87%

最も注目すべき結果は、2回接種した人ではPHNの発症リスクが87%低下したという点です。この数字は、2015年・2016年の臨床試験で示された有効性と一致していました。つまり、特別に管理された試験環境だけでなく、一般的な医療現場でも同水準の効果が確認されたことになります。

なお、1回のみの接種では効果は69%にとどまりました。2回目の接種を完了することで、効果が大きく高まることが分かります。

発症してしまっても、神経痛は軽くなる

さらに注目すべきは、ワクチンを接種していたにもかかわらず帯状疱疹を発症してしまった、いわゆるブレイクスルー帯状疱疹の方に限定した解析です。この場合でも、PHNになるリスクは未接種者と比べて47%低いという結果が示されました。

つまりこのワクチンは、帯状疱疹の発症そのものを防ぐだけでなく、万が一発症した場合でも、その後に残る帯状疱疹後神経痛を軽減する可能性があるということです。

視力に関わる合併症も78%予防

帯状疱疹が顔面、特に目の周囲に現れると、角膜炎やぶどう膜炎を引き起こし、視力障害につながることがあります。これを帯状疱疹眼症(HZO)と呼びます。今回の研究では、2回接種によってHZOの発症も78%予防できることが示されました。これまでの臨床試験ではHZOに対する効果は評価されていなかったため、今回初めて明らかになった知見といえます。

どのような人にワクチンを勧めたいか

今回の研究では、免疫抑制薬(ステロイド薬)を使用していた人でも75%という高い予防効果が確認されています。持病があるからワクチンの効果が期待できない、ということはなく、むしろ帯状疱疹を発症しやすい人ほど予防のメリットは大きいといえます。年齢を重ねた方、疲労やストレスを抱えやすい方、持病により免疫力が低下している方には、特に接種を検討する価値があります。

接種のスケジュールについて

シングリックスは、通常2〜6ヶ月の間隔をあけて2回接種します。今回の研究結果からも分かるように、1回目のみで安心してしまうと、本来得られるはずの高い予防効果を十分に得ることができません。1回目を接種した後は、忘れずに2回目も完了することが重要です。接種後は、注射部位の腫れや痛み、倦怠感などが生じることがありますが、多くは数日以内に治まります。

ワクチンを打てば絶対に発症しないのか

ここまで読むと「ワクチンを接種すれば絶対に安心」と思われるかもしれませんが、そうではありません。今回の研究でも、2回接種した人の中にも帯状疱疹を発症した人がいました。ワクチンはあくまで発症のリスクを大幅に下げるものであり、発症を完全にゼロにするものではないのです。

重要なのは、たとえ発症してしまった場合でも、PHNになるリスクは47%低下していたという点です。つまりこのワクチンは、二重の意味で私たちを守ってくれていることになります。

この研究が示す意義と限界

新しい治療法やワクチンは、まず臨床試験によって有効性が証明されます。しかし実際の医療現場には、試験に含まれていなかった多様な方がいらっしゃいます。この約200万人規模の研究は、「臨床試験で示された良好な結果が、実際の医療現場でも再現される」ことを裏付けた、非常に重要なエビデンスといえます。

ただし、この研究は医療機関の受診記録に基づいているため、症状があっても受診しなかった人は解析に含まれていません。また観察研究である以上、因果関係を完全に証明するものではない点にも留意が必要です。

おわりに

帯状疱疹は皮膚の病気にとどまらず、その後長く続く痛みによって生活の質を大きく損なうことがあります。当院では、帯状疱疹後神経痛の治療に加え、ワクチン接種に関するご相談も承っております。気になることがございましたら、お気軽にお尋ねください。


参考文献
1. Lal H, et al. Efficacy of an Adjuvanted Herpes Zoster Subunit Vaccine in Older Adults. N Engl J Med. 2015;372(22):2087-2096.
2. Cunningham AL, et al. Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older. N Engl J Med. 2016;375(11):1019-1032.
3. Zerbo O, et al. Recombinant Zoster Vaccination and Risk of Postherpetic Neuralgia or Zoster Ophthalmicus. JAMA Netw Open. 2025;8(6):e2514615.

本コラムは医学論文の内容に基づき作成していますが、個々の症状・治療方針については医師の診察が必要です。論文をもとに作成していますが、イラストなどはAIを用いて作成しています。

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