「腕を上げると肩が痛い」
「夜になると肩がズキズキして眠れない」
「肩こりだと思って様子を見ていたのに、一向に良くならない」。
肩の痛みは非常に多い症状です。肩の痛みにはさまざまな原因があり、適切な診断と治療が大切です。
「肩の痛み」とひと言でいっても、痛みが起こる場所や仕組みは人によって大きく異なります。同じ「肩が痛い」でも、原因が違えば適切な治療法もまったく変わってきます。今回は、肩の痛みがどこから生じているのかを整理し、代表的な病気について解説します。
肩は「動く範囲が広いぶん、症状が出やすい」関節
肩関節は、人間の体の中でもっとも大きく動く関節です。腕を頭の上まで上げたり、後ろに回したりできるのは、骨・関節包・腱・筋肉・神経が絶妙なバランスで支え合っているためです。裏を返せば、これらのどこか一箇所に問題が起きただけでも痛みが出やすい関節ともいえます。
肩の痛みは、痛みが生じている場所によって、おおまかに次の4つに分類すると理解しやすくなります。
- 関節の中の痛み
- 腱板の痛み
- 筋肉の痛み
- 神経の痛み
それぞれについて、代表的な病名とともに見ていきましょう。
関節の中が原因の肩の痛み
肩関節そのものに炎症や硬さ(拘縮)が生じるタイプです。
いわゆる五十肩(肩関節周囲炎)は、40〜60歳代に多く発症し、はっきりとしたけがのきっかけがないまま肩が痛み出すのが特徴です。初期は夜間の痛みが強く、寝返りで目が覚めることもあります。進行すると肩が硬くなり(可動範囲がせまくなり)、髪を結ぶ、背中で手を組む、といった動作が難しくなります。自然経過で軽快することもありますが、改善までに1年以上かかることも珍しくありません。
変形性肩関節症は、加齢や長年の負担で軟骨がすり減ることで生じます。歩行時に痛む変形性膝関節症とは異なり、腕を上げる・後ろに回す・重い物を持つといった動作時に痛みが強く出ます。
このほか、関節リウマチや感染、痛風・偽痛風などの結晶性関節炎で肩関節が腫れて強い痛みを生じることもあります。急に腫れて熱を持つ場合は早めの受診が必要です。

腱(腱板)が原因の肩の痛み
肩の痛みの中で、腱板(けんばん)に由来するものも頻度が高いです。腱板は棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋という4つの筋肉の腱からなり、肩関節を安定させる重要な役割を担っています。
腱板炎・腱板損傷では、腕を上げる途中で痛む、洗濯物を干すときに痛む、上着の袖に腕を通すときに痛むといった、動作時の痛みが特徴です。
腱板断裂は、転倒や加齢の影響で腱板が切れてしまう状態です。小さな断裂では腕は上がるものの痛みが続き、断裂が大きくなると腕が途中までしか上がらない、力が入らない、といった症状が現れます。超音波検査・MRIは腱板断裂を描出でき、診断に役立ちます。
インピンジメント症候群は、腕を上げる際に腱板が肩の骨(肩峰)に挟まれて痛みが生じます。野球やテニス、水泳といったスポーツ動作だけでなく、日常の動作でもよくみられます。
石灰沈着性腱板炎は、腱板の中にカルシウムが沈着し、突然激しい炎症が起こる病気です。「これまで経験したことのないほどの激痛」「夜眠れないほどの痛み」があるとき突然発症した、と訴える方が多く、少し動かしただけでも強い痛みを伴います。適切な治療により比較的早期の改善が期待できます。

筋肉が原因の肩の痛み
レントゲンやMRIで骨や腱に明らかな異常が見当たらないのに肩が痛い場合、筋肉や筋膜が原因になっていることがあります。
僧帽筋、肩甲挙筋、棘上筋、棘下筋、小円筋、大円筋、菱形筋、三角筋などに、「トリガーポイント」と呼ばれる痛みのもとができ、そこから離れた部位に痛みが放散することもあります。
例えば棘下筋のトリガーポイントでは肩の前側に痛みが広がることがあります。長時間のデスクワークや姿勢の崩れ、スマートフォンの使い過ぎも、筋肉性の肩の痛みの一因になります。
神経が原因の肩の痛み
肩そのものではなく、神経の刺激によって痛みが生じることもあります。
頚椎症・頚椎神経根症では、首の神経が圧迫されることで肩から腕、手にかけて痛みやしびれが広がります。肩を動かしても症状はあまり変わらず、首の動きで悪化するのが特徴です。
肩甲上神経障害は、肩の後ろの痛みや、続く夜間痛などがみられ、野球やバレーボールなど腕を繰り返し使うスポーツをしている方に比較的多くみられます。
腋窩神経障害では、肩の外側の痛み、腕を横に上げる動作での痛みがみられます。頻度は高くありませんが、画像検査だけでは見逃されやすい原因のひとつです。
肩以外に原因が隠れていることも
肩の痛みの中には、肩そのものではなく、頚椎の病気、狭心症・心筋梗塞、胆のう炎・胆石、肺の腫瘍(パンコースト腫瘍)、帯状疱疹などが原因となっているケースもあります。胸の痛みや息切れ、発熱、強いしびれを伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
おわりに
肩の痛みは「五十肩」のひと言で片づけられるものではなく、関節・腱・筋肉・神経のどこに原因があるかによって、必要な治療がまったく異なります。問診や可動域検査、超音波検査などを組み合わせることで、痛みの原因となっている組織を見極めることができます。夜間痛が続く、腕が上がらない、しびれを伴うといった症状がある場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに専門医へ相談することをおすすめします。

