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台風が近づくと片頭痛が起こる?低気圧と頭痛の関係はあるの?薬を飲むタイミングはいつがよいの?

「台風が近づくと頭が痛くなる」
「雨が降る前になると、決まって片頭痛が起こる」
「天気が崩れる前から頭が重くなる」

片頭痛の方から、このようなお話を聞くことは珍しくありません。

台風や低気圧は片頭痛の原因になるのでしょうか?

これまでの研究から、すべての片頭痛患者さんが天気の影響を受けるわけではありませんが、一部の方では、気圧・気温・湿度などの変化が片頭痛発作と関係していることがわかってきています。

特に日本では、台風が来ると気圧が大きく変化します。

大切なのは、「低気圧だから必ず頭痛になる」と考えるのではなく、自分が天候の影響を受けやすいタイプなのかを知り、片頭痛が始まったときに早めに対処することです。

今回は、台風・低気圧と片頭痛の関係、薬を飲むタイミングについて、医学論文をもとに解説します。

台風や低気圧で片頭痛は起こる?

結論からいうと、台風や低気圧によって片頭痛が起こりやすくなる方はいます。

ただし、単純に「気圧が低い=片頭痛が起こる」という関係ではなさそうです。

日本で行われたKimotoらの研究では、片頭痛患者28人に1年間頭痛日記をつけてもらい、気圧との関係を調べました。

その結果、28人中18人(64%)が天候の変化と頭痛に関連があると感じていました。

さらに研究データを詳しく調べると、気圧そのものの高さより、「気圧が変化していること」と頭痛との関係がみられました。

特に天候の影響を受けやすい患者さんでは、気圧が5hPaを超えて低下したときに頭痛が増えていました。

つまり、「低気圧だから頭が痛い」というより、気圧が下がっていく変化に反応して片頭痛が起こる方がいるようです。

※イラストはKimoto K, Aiba S, Takashima R, et al. Influence of barometric pressure in patients with migraine headache. Intern Med. 2011;50:1923-1928. の結果をAIで再生成しています。

台風が来る前に頭痛が起こることもあります

「台風がまだ遠くにあるのに、すでに頭が痛い」

という片頭痛の方もいらっしゃいます。

これも、まったく根拠のない話ではありません。

先ほどの日本の研究では、2008年5月に台風4号が接近した際、気圧が14.1hPa低下しました。

このとき、天候の影響を受けやすい患者さんの63%が台風到着の前日に頭痛を経験していました。

一方、台風が通過した後に頭痛があった方は8%でした。

つまり、台風が最も近づいたときではなく、台風が近づいて気圧が下がっている途中で片頭痛が起こる場合が多いということです。

※イラストはKimoto K, Aiba S, Takashima R, et al. Influence of barometric pressure in patients with migraine headache. Intern Med. 2011;50:1923-1928. の結果をAIで再生成しています。

どのくらい気圧が下がると片頭痛が起こる?

もう一つ、日本で行われた興味深い研究があります。

Okumaらは片頭痛患者34人を対象として、2014年の台風11号が日本に接近・通過した時期の気圧と片頭痛の関係を調べました。

その結果、通常の気圧を1013hPaとした場合、そこから6~10hPa程度下がった1003~1007hPa付近で片頭痛が多くみられました。

「もっと大きく気圧が下がらないと頭痛は起こらない」と思われるかもしれませんが、この研究では比較的小さな気圧変化でも片頭痛がみられています。

ただし、この研究は34人という比較的小さな研究です。

したがって、

「気圧が6hPa下がったら片頭痛が起こる」

という基準があるわけではありません。人によって天候への反応は大きく異なります。

※イラストはOkuma H, Okuma Y, Kitagawa Y. Examination of fluctuations in atmospheric pressure related to migraine. SpringerPlus. 2015;4:790.のデータをAIで生成しています。

なぜ低気圧で片頭痛が起こるの?

詳しい仕組みはまだわかっていません。

気圧変化に伴って三叉神経など頭痛に関係する神経系が影響を受ける可能性や、脳の片頭痛を起こす仕組みに何らかの変化が生じる可能性など、いくつかの説が研究されています。

しかし、「気圧が下がると血管が広がるから片頭痛になる」といった単純な仕組みで説明できることは証明されていません。

また台風が近づくと、気圧だけではなく、気温、湿度、風、雨なども同時に変化します。

そのため現時点では、

気圧を含めた天候の変化が、一部の片頭痛患者さんでは発作のきっかけになる可能性がある

と考えるのが適切です。

天気に影響されやすい人と、そうでない人がいます

ここはとても重要なポイントです。

「片頭痛=低気圧に弱い」というわけではありません。

ドイツのHoffmannらは、片頭痛患者さんの頭痛日記と気圧・気温・湿度を調べました。

その結果、天候と片頭痛に関連がみられる患者さんがいる一方で、ほとんど影響を受けない片頭痛の方もいました。

さらに100人を対象とした研究では、全員をまとめて解析すると、天候と片頭痛との明確な関連は認められませんでした。

ところが、一人ひとりを調べると、少なくとも13%では気象条件と片頭痛に統計的な関連が認められました。

つまり、天候の変化に敏感な片頭痛の方が一定数いるものの、すべての片頭痛の方に当てはまるわけではないということです。

「自分の片頭痛は天気と関係がある」と感じている場合には、頭痛日記をつけてみると、自分の発作パターンが見えてくることがあります。

天気予報を見れば片頭痛を予測できる?

残念ながら、天気予報だけで片頭痛を正確に予測することは難しいと考えられています。

片頭痛は天気だけで起こる病気ではありません。

たとえば、次のような要因も片頭痛のきっかけになります。

  • 睡眠不足や寝すぎ
  • 疲労やストレス
  • 月経
  • 空腹や脱水
  • 強い光や音
  • 生活リズムの変化

そのため、「明日は低気圧だから絶対に頭痛になる」と必要以上に心配する必要はありません。

「台風が来るから」という理由だけで、頭痛が始まる前からトリプタンや鎮痛薬を飲む方法はお勧めできません。

台風による片頭痛も「薬を飲むタイミング」が大切

では、実際に台風の日に片頭痛が始まったらどうすればよいのでしょうか。

ポイントは、いつもの片頭痛が始まったと判断できたら、我慢しすぎず早めに治療することです。

トリプタンを服用するタイミングを調べたTEMPO studyでは、頭痛が始まってから1時間以内に服用した場合と、それより遅く服用した場合を比較しています。

2時間後に頭痛が消えていた割合は、

早く服用した場合:52.8%
遅く服用した場合:30.2%

でした。

さらに、それまで薬を飲むのが遅かった方に「頭痛開始から1時間以内に飲む」ようにしてもらうと、2時間後に痛みが消える割合は38.1%から53.7%へ改善しました。

つまり、「もう少し我慢してから薬を飲もう」と考えるより、いつもの片頭痛が始まったとわかった段階で治療することが大切ということです。

この研究は台風による片頭痛だけを調べた研究ではありませんが、台風や低気圧がきっかけとなった片頭痛でも参考になる考え方です。

「早めに薬を飲むと、薬の使いすぎにならない?」という心配

ここで注意したいのが、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)です。

トリプタンや鎮痛薬などを頻繁に使っていると、頭痛を治すために飲んでいる薬によって、かえって頭痛の日が増えてしまうことがあります。

「頭痛があるから薬を飲む」

「薬を使う日が増える」

「さらに頭痛の日が増える」

という悪循環が起こることがあります。

そのため、「早めに飲むこと」と「たくさんの日に飲むこと」は分けて考える必要があります。

片頭痛が始まったら適切なタイミングで治療することは大切ですが、急性期治療薬を使う日そのものが増えてきた場合には、治療方法を見直すサインです。

薬の使いすぎが心配なら「ナルティーク」という選択肢も

近年、片頭痛治療に新しいタイプの薬が登場しています。

ナルティークOD錠(リメゲパント)です。

ナルティークは、片頭痛の発症に深く関係するCGRPという物質の働きを抑える薬で、従来のトリプタンとは異なる仕組みで片頭痛を治療します。

日本人を対象とした臨床試験でも、片頭痛発作に対する有効性と安全性が検討されています。

さらに注目されているのが、薬の使いすぎによる頭痛との関係です。現在までの研究では、リメゲパントを含む「ゲパント」と呼ばれる薬は、従来の急性期治療薬と比べてMOHを起こしにくい可能性があると考えられています。そのため、鎮痛薬やトリプタンを使う日が増えてMOHが心配な局面では、治療選択肢の一つになります。

ただし、ナルティークであれば「何日でも自由に飲んでよい」という意味ではありません。一か月の頭痛日数が4日を超えてきて、頭痛の日が多い場合には、急性期の薬だけでなく、片頭痛を起こりにくくする予防治療が必要かどうかも含めて考えることが大切です。

もう一つのナルティークの特徴が、短期予防療法としての使い方です。ナルティークは、片頭痛発作の急性期治療に加えて「発症抑制(予防)」も適応として承認されており、予防目的で使用する場合は75mgを隔日で内服します。ナルティークは血中半減期が10〜12時間程度と比較的短く、早い効果発現が期待できます。そのため、台風の時に起こる片頭痛など、片頭痛が起こりやすい時期がある程度予測できる方に対して、その期間に限定して短期的に予防投与するという使い方は、今後の臨床現場での選択肢として注目されていくとおもわれます。

台風は避けられなくても、片頭痛には備えられます

台風や低気圧を避けることはできません。

しかし、自分の片頭痛の特徴を知って、発作が起きたときの準備をしておくことはできます。

「台風の前に頭痛が起こりやすい」と感じている方は、まず頭痛日記をつけてみてください。

そして、

  • いつ頭痛が始まったのか
  • どんな天候だったのか
  • どの薬を、いつ飲んだのか
  • 薬を飲んで何時間くらいで良くなったのか

を記録しておくと、自分の片頭痛のパターンがわかりやすくなります。

大切なのは、「低気圧だから仕方がない」と我慢することではありません。

いつもの片頭痛が始まったら適切な薬を早めに使うこと。そして薬を使う日が増えてきたら、治療そのものを見直すこと。

「台風が来るたびに寝込んでしまう」
「市販の鎮痛薬を飲む回数が増えている」
「トリプタンをいつ飲めばよいかわからない」
「薬の使いすぎによる頭痛が心配」

このような場合には、一度、頭痛を専門とする医療機関で治療方法を整理してみることをおすすめします。

天気を変えることはできませんが、天気が変わったときの片頭痛への備え方は変えることができます。

参考文献

  1. Kimoto K, Aiba S, Takashima R, et al. Influence of barometric pressure in patients with migraine headache. Intern Med. 2011;50:1923-1928. DOI: 10.2169/internalmedicine.50.5640.
  2. Hoffmann J, Lo H, Neeb L, Martus P, Reuter U. Weather sensitivity in migraineurs. J Neurol. 2011;258:596-602. DOI: 10.1007/s00415-010-5798-7.
  3. Hoffmann J, Schirra T, Lo H, et al. The influence of weather on migraine – are migraine attacks predictable? Ann Clin Transl Neurol. 2015;2:22-28. DOI: 10.1002/acn3.139.
  4. Okuma H, Okuma Y, Kitagawa Y. Examination of fluctuations in atmospheric pressure related to migraine. SpringerPlus. 2015;4:790. DOI: 10.1186/s40064-015-1592-4.
  5. Lantéri-Minet M, Mick G, Allaf B. Early dosing and efficacy of triptans in acute migraine treatment: the TEMPO study. Cephalalgia. 2012;32:226-235. DOI: 10.1177/0333102411433042.

ペインクリニック芦屋ピッコロ診療所の頭痛外来は、西宮市、芦屋市、神戸市東灘区地域で、それぞれの片頭痛の状態にあわせた治療を御提案します。

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