「毎月のように寝込んでしまう」
「トリプタンは効くけれど、発作自体を減らしたい」
「CGRP製剤は高いけれど、本当にその価値があるの?」
片頭痛は単なる“頭痛”ではありません。拍動性の痛み、吐き気、光・音過敏、動作での悪化。日本では成人の約8%が罹患するとされ、労働生産性の低下や生活の質(QOL)への影響は極めて大きいことが報告されています。国内推計では、プレゼンティーズム(仕事の生産性が大きく下がる状態)による経済損失は年間数千億〜兆円規模にのぼるとされています¹)。
近年登場した CGRP関連抗体製剤(エムガルティ®、アイモビーグ®、アジョビ®など)は、片頭痛の病態の中核であるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を標的とした予防注射薬です。月1回(製剤により異なる)の自己注射で発作回数を減らすことが期待できます。
では、どのような方に効果が高いのでしょうか?
CGRP製剤が効きやすいタイプとは?
典型的な片頭痛症状がある
片側性、拍動性、吐き気、光・音過敏などの典型的特徴を持つ患者で高い有効性が報告されています²)。
いわば「片頭痛らしい片頭痛」であるほど、CGRP受容体関連薬の治療効果が出やすいと考えられます。
トリプタンが効く
急性期治療薬トリプタンが有効な方では、CGRP関連経路が関与している可能性が高く、CGRP抗体も奏効しやすいことが報告されています³)。
予防薬の失敗歴が少ない
従来予防薬(β遮断薬、抗てんかん薬、抗うつ薬など)を多数試して無効だった症例より、早期段階で導入した方が反応率が高い可能性が示唆されています²)。
CGRP製剤が効きやすい特徴
| 特徴 | 期待度 |
|---|---|
| 片側性・拍動性頭痛 | ◎ |
| 吐き気・光過敏あり | ◎ |
| トリプタン有効 | ◎ |
| 重い頭痛、締め付けられる頭痛 | × |
| 動いても頭痛は増悪しない | × |
実際どれくらい効くの?
代表的臨床試験では、
- 月間片頭痛日数が 約3〜4日減少
- 50%以上改善する人が 約50〜60%
と報告されています²⁴)。
月間片頭痛日数の変化イメージ
月10日 → 6〜7日へ減少
月8日 → 4〜5日へ減少
特に慢性片頭痛(15日/月以上)では、生活が劇的に変わるケースもあります。
1回1万円以上の価値はあるのか?
自己負担は保険適用3割負担で月約1〜1.5万円程度(薬剤により差あり)。
仮に「週1回寝込む」場合:
- 月4日寝込む
- 年48日寝込む
- つまり年間1か月以上失われる
仕事・家事・育児・趣味・人生の時間。
金銭だけでなく、生活の質の回復という観点が重要です。

向いていない可能性があるケース
- 緊張型頭痛
- 診断がはっきりしない頭痛
まずは正確な診断が前提です。
副作用と安全性
CGRP抗体は比較的安全性が高いとされています。
主な副作用:
- 注射部位反応
- 便秘(特にエレヌマブ)
重篤な副作用は少ないと報告されています²)。
まとめ:あなたに価値があるか?
✔ 月4日以上頭痛がある
✔ より「片頭痛」らしい頭痛がある
✔ 生活に大きな支障がある
このような方では、十分検討する価値があります。
片頭痛は「我慢する病気」ではありません。
自分の頭痛の性質・頻度・生活への影響を整理し、専門医と相談することが大切です。
参考文献
- 日本医事新報社. 片頭痛による社会的損失の推計.
- Ashina M, et al. The Journal of Headache and Pain. 2022;23:71.
- Diener HC, et al. Pharmaceuticals. 2023;16(2):271.
- Goadsby PJ, et al. N Engl J Med. 2017;377:2123-2132.
ペインクリニック芦屋ピッコロ診療所は西宮市、芦屋市、神戸市東灘区地域で頭痛専門医が頭痛外来を行っています。頭痛でお困りの方はご相談ください。

