「子どもがよく頭痛を訴える」「学校を休むほどの頭痛がある」。このような悩みを抱える保護者の方は少なくありません。片頭痛は大人の病気というイメージがありますが、実際には小児や思春期でもよくみられる病気です。特に思春期になると片頭痛をお持ちの方が増え、学校生活や日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
近年では、片頭痛は「痛くなってから治す」だけでなく、発作を減らす予防治療が重要と考えられています。この記事では、小児~思春期の片頭痛予防について、保護者の方が知っておきたいポイントを解説します。
まずは生活習慣の見直しが大切
小児の片頭痛予防では、薬を始める前に生活習慣の見直しが重要です。片頭痛はさまざまな要因によって誘発されることがあります。
主な誘因には次のようなものがあります。
- 睡眠不足または寝すぎ
- 朝食を抜くなどの食生活の乱れ
- 水分不足
- 強い光や音
- ストレスや疲労
そのため、まずは次のような生活習慣を整えることが基本となります。
- 規則正しい睡眠
- バランスのよい食事
- 十分な水分摂取
- ストレス管理
また、頭痛ダイアリー(頭痛日記)をつけることで、頭痛の頻度や誘因を把握しやすくなります。
しかし、生活改善だけでは十分に改善しない場合も多く、その場合には予防薬の治療が検討されます。日本の研究では、小児・思春期の頭痛患者のうち予防薬を使用している割合は 約4~8%程度と報告されています。
予防治療を考える目安
小児片頭痛では、次のような場合に予防治療が検討されます。
予防治療チェック表
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 頭痛の頻度 | 週1~2回以上、または月3~4回以上 |
| 生活への影響 | 学校を休む、授業に集中できない |
| 症状の強さ | 嘔吐や強い痛みを伴う |
| 発作の持続 | 2〜3日続く頭痛 |
| 急性期治療の効果 | 鎮痛薬・トリプタンが効きにくい |
このような状態が続く場合、予防治療を検討することで頭痛の回数を減らせる可能性があります。
ただし、単純に回数だけで判断するのではなく、子ども本人や家族の負担の大きさも重要な判断材料になります。
小児片頭痛で使われる主な予防薬
現在、小児・思春期の片頭痛に対して「絶対的な標準治療」といえる薬はまだ確立されていません。しかし、研究やガイドラインから有効性が示されている薬はいくつかあります。
小児片頭痛の主な予防薬
| 薬剤 | 特徴 | 主な副作用 |
|---|---|---|
| アミトリプチリン | 小児でもよく使われる予防薬 | 眠気、口渇、便秘 |
| トピラマート※ | 神経の過剰興奮を抑える | 食欲低下、集中力低下 |
| プロプラノロール | 血管や自律神経を調整 | 血圧低下、徐脈 |
| ロメリジン | 脳血管を安定させる | 低血圧、めまい |
| シプロヘプタジン | 抗ヒスタミン作用で発作抑制 | 眠気、体重増加 |
| リボフラビン(B2)※ | ビタミン療法として使用 | 副作用が少ない |
※保険適応なし(2026年3月6日)
特にアミトリプチリンは小児片頭痛で広く使用されており、発作の頻度や持続時間、頭痛の程度や生活支障度を減らす効果が報告されています。
栄養療法という選択肢
近年、薬以外の予防法として栄養療法も注目されています。
代表的なものが リボフラビン(ビタミンB2)です。リボフラビンはミトコンドリアのエネルギー代謝を改善し、片頭痛の発生を抑える可能性があると考えられています。
研究では
- 発作頻度の減少
- 鎮痛薬使用量の減少
が報告されています。副作用も少ないため、補助療法として使用されることがあります。ja
また、
- マグネシウム
- コエンザイムQ10
- メラトニン
なども研究されていますが、効果についてはまだ十分な証拠があるとは言えません。
予防治療の流れ
予防治療は次のような流れで進めます。
生活習慣改善
(睡眠・食事・水分)
↓
頭痛ダイアリーで評価
↓
月3~4回以上の頭痛
または生活支障
↓
予防薬開始
↓
1~2か月で効果判定
↓
頭痛が半減 → 3~6か月継続
予防薬はすぐに効果が出るわけではありません。一般的には 1~2か月で効果を評価し、2~3か月で頭痛が半分程度になることを目標とします。
保護者の方へ
小児片頭痛の予防治療は、まだ研究が発展している段階であり、すべての子どもに同じ治療が当てはまるわけではありません。
大切なのは
- 子どもに合った治療を見つけること
- 生活習慣を整えること
- 不安を減らしながら治療を進めること
です。
適切な予防治療によって、片頭痛の回数を減らし、学校生活や日常生活を大きく改善できる可能性があります。繰り返す頭痛がある場合には、医療機関で相談することをおすすめします。
※当院では10歳以上の頭痛に対応しています。
参考文献
- 山中岳ほか. 小児・思春期の片頭痛診療-予防療法の実際- 日本頭痛学会誌 2026. ja
- Katsuki M, et al. Life (Basel). 2024.
- Kohandel Gargari O, et al. JAMA Netw Open. 2024.
- Shimomura H, et al. Neurol Int. 2024.
- Martello E, et al. Acta Paediatr. 2025.

