― 日本人459例を対象としたCGAN試験からわかること ―
片頭痛は「体質だから仕方ない」「痛くなったら薬を飲むしかない」と思われがちですが、現在は発作を減らすための予防治療が進歩しています。その代表がCGRP関連抗体薬です。
今回は、CGRPを標的とした抗体薬 エムガルティ の有効性を、日本人を対象とした信頼性の高い臨床試験「CGAN試験」をもとに解説し、実際の使用方法について解説します。
CGRPとは何か?
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛の発作時に増加する神経伝達物質です。
- 三叉神経から放出される
- 血管拡張や炎症反応を引き起こす
- 痛みの伝達を強める
エムガルティはこのCGRPの働きを抑えることで、発作の頻度そのものを減らす治療薬です。

社会福祉法人富永病院 富永クリニック院長 竹島多賀夫先生編集
CGAN試験とは?
CGAN試験は、日本人の反復性片頭痛患者459例を対象とした、
- 多施設共同試験
- 無作為化
- 二重盲検
- プラセボ対照
- 並行群間比較試験
という、非常に信頼性の高い臨床試験です。
対象患者
- 18~65歳
- 月4~14日の片頭痛日数
- 月2回以上の発作
日常生活に支障が出る「中等度以上の反復性片頭痛」の方が対象です。
投与方法
- エムガルティ120mg/月
- エムガルティ240mg/月
- プラセボ
を1:1:2の割合で無作為に割り付け、6か月間投与しました。
頭痛日数はどれくらい減ったのか?
6か月間の二重盲検期間における、1か月あたりの平均頭痛日数の変化は以下の通りです。
| 群 | 月あたり頭痛日数の変化 |
|---|---|
| プラセボ | −0.6日 |
| エムガルティ120mg | −3.6日 |
エムガルティ投与群では、統計学的に有意な減少が認められました。
つまり、もともと月に8日 頭痛があった方なら、
→ 月に約4~5日 まで頭痛の日数が減る可能性がある、ということです。
これは生活の質(QOL)にとって非常に大きな変化です。
どれくらいの人が「効いた」と言えるのか?
重要なのは「何割の人がどれくらい改善したか」です。
CGAN試験では以下の反応率が示されています。
- 50%以上 片頭痛の程度が改善:49.8%
- 100%片頭痛が改善(発作ゼロ):約9%
つまり、
約2人に1人は頭痛回数が半分以下に減少
約10人に1人は頭痛が完全に消失
という結果でした。
これは片頭痛予防治療として非常に良好な成績です。
どんな人に向いているのか?
エムガルティは次のような方に特に適しています。
- 月4日以上の片頭痛がある
- トリプタン使用回数が多い
- 痛み止めが効きにくくなっている
- 仕事や家事への影響が大きい
- 月経関連片頭痛が毎月強く出る
特に「一定の周期で必ず悪化する」タイプの方では、発作頻度を減らすことで生活が安定します。
副作用は?
臨床試験で多かった副作用は、
- 注射部位の痛み
- 軽度の発赤
など比較的軽微なものでした。
全身性の重篤な副作用は稀と報告されています。
片頭痛治療は“我慢する時代”から“予防する時代”へ
これまで片頭痛治療は
「痛くなったら飲む」
という対処療法が中心でした。
しかし、
- 発作が起きるたびに脳が過敏化する
- 鎮痛薬の使いすぎによる薬物乱用頭痛
- 生活の質の低下
といった問題がありました。
CGRP関連抗体薬は、
発作の回数を減らすという根本的アプローチです。
エムガルティの使い方・効果・費用・副作用について
エムガルティは、片頭痛を予防するための注射薬です。片頭痛が起こった時に症状を抑える薬ではなく、頭痛の回数そのものを減らし、日常生活への支障を軽くすることを目的として使用します。通常は初回に2本、その後は月1回1本を皮下注射します。毎日内服を続ける必要がないため、予防薬の飲み忘れが心配な方や、これまでの予防治療で十分な効果が得られなかった方にとって、新たな選択肢となる治療です。

治療効果には個人差がありますが、臨床試験では片頭痛日数の減少や、急性期治療薬の使用回数の減少が報告されています。実際の診療でも、「頭痛の回数が減った」「予定を立てやすくなった」「仕事や家事への影響が少なくなった」と感じられる方がおられます。片頭痛によって生活の質が低下している方にとって、治療を前向きに考えるきっかけとなる薬のひとつです。
費用は保険診療であっても比較的高額で、3割負担の場合、初回は2本で約2万7千円前後、2回目以降は1本で約1万3千円前後が目安となります。これに加えて診察料などが必要です。継続的な治療となるため、効果だけでなく費用面も含めて無理なく続けられるかを確認しながら進めることが大切です。
副作用としては、注射部位の赤み、腫れ、痛み、かゆみなどがみられることがありますが、多くは軽度で経過します。まれにアレルギー反応が起こることもあるため、強い発疹や息苦しさなど、いつもと違う症状があれば早めにご相談ください。
なお、アレルギーなど大きな問題がなければ、3か月分をまとめて処方し、ご自宅で自己注射を続けていただくことも可能です。当院では、自己注射が初めての方にも安心して取り組んでいただけるよう、注射方法や保管方法、注意点をご説明し、必要なトレーニングも行っています。実際には多くの方が問題なく習得されています。片頭痛予防注射にご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
CGAN試験の結果からわかることは:
- 月3日程度の有意な頭痛減少
- 約50%が半分以下に改善
- 約9%が完全消失
というエムガルティの有効性です。
片頭痛は「体質」で我慢しなければならない頭痛ではなく「治療できる疾患」です。
もし
- 月に何度も寝込む
- 予定をキャンセルしている
- 痛み止めが増えている
という状態であれば、予防治療を検討するタイミングかもしれません。
我慢を続けるのではなく、
発作を減らす治療を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

