「頭がズキズキするけれど、とりあえず市販薬で様子をみよう」
多くの方が、こうして片頭痛と付き合っているのではないでしょうか。
結論から言えば、発作が月1〜2回程度で、日常生活への影響が軽く、市販薬で十分に治まる場合は大きな問題にならないことが多いです。
しかし、回数が増えてきたり、薬の効き目が悪くなってきたりした場合は注意が必要です。
それは、脳がより片頭痛を起こりやすくなる状態になりつつあるサインかもしれません。
片頭痛とは?「脳の過敏性」に関連
片頭痛は単なる「血管の痛み」ではありません。
脳の三叉神経が過敏になり、CGRPなどの炎症性物質が放出されることで、血管周囲に炎症が起こり、拍動性の痛みが生じます【1】【4】。
その結果、
- ズキズキする拍動性頭痛
- 光がまぶしい(光過敏)
- 音がうるさく感じる(音過敏)
- 吐き気や嘔吐
といった症状が出ます。
つまり片頭痛は、脳の神経が興奮しやすくなっている状態です。
市販の鎮痛薬は「痛みを感じにくくする」作用はありますが、
過敏になった神経そのものを鎮める治療ではありません。
市販薬(OTC薬)はどこまでOK?
イブ®、ロキソニン®、バファリン®などのOTC薬は、軽い発作には有効です。
しかし、次のような場合は要注意です。
- 月に10日以上、頭痛薬を飲んでいる
- 週に2回以上服用している
- 以前より効きづらくなってきた
この状態が続くと、薬物使用過多頭痛(MOH)を引き起こすリスクが高まります【2】【3】。
なぜ薬を飲みすぎると頭痛が増えるのか
痛み止めを頻繁に使用すると、脳の「痛みを抑える回路」が疲弊します。
その結果、逆に痛みに対して過敏になり、少しの刺激でも頭痛が起きやすくなります。
すると、
「飲んでも効かない」
「飲まないと不安」
という悪循環に入ってしまいます。
これが薬物使用過多頭痛(MOH)です。
OTC薬の安全な目安は、月10日以内です。
眠気を起こす成分に注意
日本の一部のOTC頭痛薬には
アリルイソプロピルアセチル尿素という鎮静成分が含まれています。
この成分は眠気や集中力低下を起こすことがあり、
海外では未承認または禁止されている国もあります【7】【8】。
車の運転や仕事・勉強に影響する可能性があるため、
常用は避けることが望ましいでしょう。
予防療法という選択肢
次のような場合は、医療機関での相談をおすすめします。
- 発作が月4回以上
- 薬を使う日が月10日を超える
- 吐き気や寝込みがちで生活に支障がある
現在は、発作を減らす「予防療法」が充実しています。
主な予防薬:
- β遮断薬(プロプラノロールなど)
- 抗てんかん薬(バルプロ酸など)
- 抗CGRP抗体薬(エレヌマブ、フレマネズマブなど)
特にCGRP関連薬は、片頭痛の原因物質そのものを抑える治療で、
発作回数を半分以下に減らす効果が報告されています【9】。
治療は、
「痛みを止める」から
「痛みを起こさない」へ
と進化しています。
片頭痛は社会的損失も大きい
日本頭痛学会によると、
片頭痛による年間の経済的損失は約2,880億円と推計されています【10】。
欠勤だけでなく、
痛みを我慢して働くことで生産性が下がる
「プレゼンティーイズム」も大きな問題です。
片頭痛を適切に治療することは、
個人だけでなく社会全体にとっても重要です。
まとめ:OTCで様子を見るか、専門的な治療を始めるか
✔ 月1〜2回で軽症 → OTCでも可
✔ 月4回以上、薬が増えている → 受診を検討
✔ 月10日以上薬を使用 → 要注意
片頭痛は「体質だから仕方ない」ものではありません。
脳の過敏性を整えることで、発作は減らせます。
もし、
- 頭痛が増えてきた
- 市販薬が手放せない
- 生活の質が下がっている
そのようなときは、
一度専門的な治療を考えてみてください。
痛みを抑えるだけでなく、痛みを起こさない体へ。
それが、これからの片頭痛治療です。
参考文献
- Goadsby PJ, et al. Lancet Neurol. 2017;16(1):25-34.
- Steiner TJ, et al. Cephalalgia. 2014;34(9):632-658.
- Ashina M, et al. Lancet Neurol. 2021;20(10):786-798.
- Headache Classification Committee of the IHS. Cephalalgia. 2018;38(1):1-211.
- 日本頭痛学会. 慢性頭痛の診療ガイドライン2021.
- エスエス製薬 成分辞典.
- U.S. Food and Drug Administration. 2024.
- European Medicines Agency. 2023.
- Dodick DW, et al. BMJ. 2023;382:e075162.
- 日本頭痛学会. 頭痛学会報. 2023.
ペインクリニック芦屋ピッコロ診療所は西宮、芦屋、神戸市東灘区の頭痛外来です。

