新しい片頭痛予防薬「アクイプタ®」という選択
― 頭痛が起こる前に減らす治療へ ―
「また頭痛が来るかもしれない」
「予定を入れても体調次第になってしまう」
片頭痛をお持ちの方の多くが、こうした不安を抱えながら生活しています。
痛くなったら薬を飲む。
少し良くなって、また繰り返す。
という片頭痛への対処をしていませんか?
最近、片頭痛治療の考え方は大きく変わってきました。
👉 頭痛が起きてから治すのではなく、起きにくくする治療
=「予防治療」です。
その新しい選択肢として登場した飲み薬がアクイプタ®(アトゲパント)です。
片頭痛は「体質だから仕方ない」病気ではありません
片頭痛はストレスや疲れだけが原因ではありません。
現在では、脳の中で放出される CGRP(シージーアールピー)という神経伝達物質が関係していることが分かっています。
この物質が増えると、
- 脳が痛みに敏感になる
- 少しの刺激でも頭痛が起きやすくなる
という状態になります。
アクイプタ®は、この物質の働きを抑えることで、片頭痛そのものを起こりにくくする薬です。
いわゆる痛み止めとは違い、
「頭痛の回数を減らす」ことを目的としています。
日本人でも効果が確認されています(RELEASE試験)
「新しい薬って本当に効くの?」
多くの方が気になる点だと思います。
アクイプト®は、日本人の片頭痛患者さんを対象にした
RELEASE試験という研究で効果が確認されています。
この研究では、
- 月に4〜14日頭痛がある方
を対象に12週間治療を行いました。
その結果、
✅ 頭痛の日数が減少
✅ 安全性にも大きな問題なし
という結果が示されました。
つまり、
日本人でも効果が期待できることが科学的に確認された薬です。

頭痛専門家も「早めの予防」をすすめています
2025年、国際頭痛学会は次のように発表しました。
片頭痛は、回数が増加する前に予防治療を始めることが重要
以前は「重症になったら予防薬」と考えられていました。
しかし現在は、
✔ 頭痛で困り始めた段階
✔ 生活に影響が出始めた段階
で予防治療を考えることが推奨されています。
アクイプタ(CGRP拮抗薬)はこんな方に向いています
- 月に4日以上頭痛がある
- 市販薬を使う回数が増えている
- 頭痛で予定変更することが多い
- 注射治療には抵抗がある
- これまでの予防薬が合わなかった
特に、
👉 「日常生活で片頭痛に振り回されている」
という方に適しています。
片頭痛の予防治療を考える目安チェックリスト
次の項目に当てはまりますか?
□ 急性期治療を行っても頭痛発作で日常生活を著しく障害される。
□ 頭痛日数が月間4回以上ある。
□ 急性期治療薬(鎮痛薬やトリプタン)で効果が不十分、あるいは使えない。
□ 頭痛の回数が月に10日に達しそう。
片頭痛は「我慢する病気」ではなく、
予防治療によって回数を減らしていく、片頭痛による生活支障をなくしていく、ことが望ましいといわれています。
一度、予防治療について相談してみることをおすすめします。
これまでの予防薬との違い
これまでにも片頭痛の予防薬はありました。
例えば:
- 血圧の薬
- 抗うつ薬
- てんかんの薬 など
これらは今も大切な治療ですが、
もともと片頭痛専用に作られた薬ではありません。
そのため、
- 眠気
- だるさ
- 血圧低下
- 体重変化
などで続けにくいこともありました。
アクイプトをはじめとしたCGRP関連薬(CGRP関連抗体製剤:エムガルティ、アジョビ、アイモビーク、CGRP拮抗薬:ナルティーク)は
片頭痛の原因に直接働く薬として開発された点が大きな違いです。
注射ではなく「飲み薬」で始められる
CGRPを標的とした注射薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーク)の有効性については、多くの臨床試験や実臨床研究で報告されています。
ですが、
- 注射への抵抗
を感じる方もいます。
アクイプト®は
✅ 1日1回の内服
✅ 注射不要
で始められるため、予防治療のハードルを下げる薬と言えます。
アクイプトはいつ効く?
さきほどご紹介したRELEASE試験でも
- 1〜4週間で変化を感じ始め
- 約3か月で効果が安定
してきます。
目標は「完全になくす」ことではなく、
👉 頭痛の日を半分くらい減らすこと
です。
これだけでも生活の負担は大きく変わると思われます。
処方日数について(大切なお知らせ)
アクイプト®は新しい薬のため、
📌 発売から12か月間は1回14日分までの処方制限
があります。
最初は2週間ごとに効果や体調を確認しながら治療を進めます。
予防治療で変わるのは「生活」
予防治療によって、
- 頭痛への不安が減る
- 予定を立てやすくなる
- 仕事や家事に集中できる
など、生活の自由度が大きく改善することが知られています。
片頭痛治療の目的は、
痛みを我慢することではありません。
片頭痛に影響されない日々を取り戻していただく、安心して日常生活を送っていただく、ことです。
まとめ
アクイプト®(アトゲパント)は、
✅ 日本人研究(RELEASE試験)で効果確認
✅ 世界的に注目される新しい予防治療
✅ 飲み薬で始められる
✅ 頭痛の回数そのものを減らす治療
です。
「頭痛があるのが当たり前」になっている方ほど、
予防治療で生活が変わる可能性があります。
最後に
ここまでアクイプト®(アトゲパント)という新しい予防治療についてご紹介してきましたが、
最後に一つ大切な点があります。
「新しい薬=すべての方にとって最良の薬」ではありません。
片頭痛にはさまざまなタイプがあり、
- 前兆が目立つ方
- ストレスや緊張の影響が強い方
- 睡眠や気分の影響を受けやすい方
- 肩こりや体の緊張を伴う方
など、背景は一人ひとり異なります。
そのため予防治療では、
✅ 頭痛の頻度
✅ 症状の特徴
✅ 生活スタイル
✅ 体質や持病
✅ 副作用の出やすさ
を総合的に考えて薬を選ぶことが非常に重要です。
長年使用されてきた従来の予防薬が適している場合もあれば、新しいCGRP関連薬が有効な場合もあります。
大切なのは「最新の薬を使うこと」ではなく、その方の背景に合った治療を選ぶことです。
当院では、頭痛のタイプや生活への影響を丁寧に確認しながら、その方に最適な予防治療をご提案しています。
ペインクリニック芦屋ピッコロ診療所は西宮市、芦屋市、神戸市東灘区地区で頭痛外来を行っています。
参考文献
- Matsumori Y, et al. RELEASE study. Cephalalgia. 2025.
- Sacco S, et al. International Headache Society Position Statement. Cephalalgia. 2025.
- Ailani J, et al. N Engl J Med. 2021.

