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中学生・高校生の片頭痛 ― 思春期頭痛とCGRP治療の最新エビデンス

はじめに

片頭痛は大人だけでなく、小児〜思春期にも高頻度で発症します。

日本の小学生から高校生を対象にした疫学研究(Itoigawa Benizuwaigani Study)では、2489人の回答のうち、頭痛の有病率は36.4%、片頭痛は9.5%、薬剤使用過多による頭痛は0.44%と報告されています。つまり、およそ10人に1人が片頭痛を経験している可能性があります。

また、頭痛を持つ子どもの約70%が日常生活に支障を感じているにもかかわらず、医療機関を受診しているのは約30%にとどまっていました。この結果から、思春期の頭痛は決して珍しいものではなく、適切な診断や治療につながっていないケースも多いことが示唆されています。

さらにこの研究では、片頭痛の誘因として、天候の変化、スマートフォンの使用、テレビゲームなどが関係する可能性が示されました。特にスマートフォンやゲームに関連するタイプの片頭痛では、症状の負担が大きいにもかかわらず医療機関を受診していないケースが多いことが報告されています。

このように、小児・思春期の頭痛は決して珍しい症状ではなく、学業や日常生活に影響する重要な健康問題と考えられています。適切な診断と治療により、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。


小児・思春期片頭痛の特徴

小児・思春期の片頭痛は成人と比べ、以下のような特徴があります:

  • 発作時間が比較的短い(2時間以上)ことがある
  • 両側性の痛み も多い
  • 嘔吐や腹痛など随伴症状が強い場合もある
  • 光・音過敏を訴えやすい

このように、成人型片頭痛と症状がやや異なるため、診断基準もICHD-3で調整されています


CGRPとは何か? 片頭痛との関連

CGRPは神経から放出される物質で、血管を広げたり痛みの信号を強めたりする働きがあります。
片頭痛発作のときにはこのCGRPが増えることが知られており、現在では片頭痛を引き起こす重要な仕組みの一つと考えられています。


思春期でのCGRP製剤の取り扱い:最新の動き

小児・思春期のCGRP関連抗体薬

2025〜2026年の臨床試験データ により、CGRPモノクローナル抗体の fremanezumab(アジョビ) が小児〜思春期片頭痛の予防として有効であることが示されました。

  • SPACE試験(Phase III)
     6〜17歳の片頭痛患者を対象に実施された多施設ランダム化比較試験で、fremanezumabは プラセボと比較して月間片頭痛日数を有意に減少 させました。
     特に 体重45kg以上の患者 における効果が明らかで、米国FDAはこのデータをもとに 6歳以上への適応拡大を承認 しています。
  • 安全性プロファイル
     CGRP抗体の安全性は成人と同等レベルで、重大な副作用は報告されていません。注射部位の発赤が最もよく見られる副作用です。

これらのデータは、15歳以上の思春期患者でも CGRP製剤が臨床的に有効かつ忍容性が高い ことを示しており、適切な評価を満たせば治療選択肢として考慮可能 と考えられます。

※注意 日本ではアジョビは小児への投与は認められていません。


従来の小児・思春期片頭痛治療とCGRP製剤の位置づけ

これまで、小児・思春期片頭痛に対して用いられてきた治療は主に以下です:

  • 生活習慣改善(睡眠・食事・ストレス)
  • 市販鎮痛薬の使用(アセトアミノフェン、NSAIDs)
  • トリプタン系薬剤(年齢制限あり)
  • 漢方薬やβブロッカー、抗うつ薬、抗てんかん薬などの予防療法

しかし、これらの治療で十分な効果が得られない場合、CGRP抗体療法は新たな予防選択肢として注目されます。特に 慢性化傾向の強い症例や、学業・活動に支障が大きい場合 に候補となり得ます。


最新の研究:エビデンスまとめ

以下は2024〜2026年に発表された重要論文です:

Fremanezumab in Children and Adolescents with Episodic Migraine

  • N Engl J Med, 2026
  • 6〜17歳におけるPhase IIIランダム化比較試験
  • fremanezumabが月間片頭痛日数と中等度以上の頭痛日数をプラセボ比で有意に減少させた。

SPACE試験のFDA承認拡大レポート

  • NeurologyLive, 2025
  • fremanezumabのregulatory update(FDAによる片頭痛予防適応拡大)
  • 6〜17歳までを含むデータを評価し承認に至った。

PracticalNeurologyによる臨床報告

  • 2025年発表
  • Phase III試験での有効性と安全性を強調
  • 小児・青年期での臨床的意義を補強。

小児・思春期片頭痛の診断指針

ICHD-3(国際頭痛分類第3版)では、小児片頭痛の特徴的な点として以下が挙げられています:

  • 発作時間が短い場合も含めて評価
  • 両側性の痛みも片頭痛として考慮
  • 二次性頭痛の除外が重要

特に 発作頻度・随伴症状・生活への影響度 を丁寧に評価することが診断精度向上につながります。


治療戦略の実践

1. 初期対応

  • 生活リズム最適化(睡眠・水分・ストレス管理)
  • 発作時の鎮痛薬使用と適切なタイミング教育

2. 予防療法

  • トリプタン禁忌例や頻度増加例では予防療法を検討
  • 第一選択としては従来から用いられていた予防薬
  • CGRP抗体は 体重・年齢・禁忌の確認後に適用

3. CGRP抗体の位置づけ

  • 重症例や標準治療で効果不十分な場合の “第2選択”
  • 継続治療の可否は効果判定(3〜6ヵ月)で評価

まとめ

小児・思春期片頭痛は、成長期の心身の発達に深刻な影響を与える疾患です。近年の進展として CGRP抗体療法(fremanezumab)が15歳以上でも有効かつ安全に使える可能性 が臨床試験で示され、治療戦略の幅が広がっています。ただし適応や評価には慎重さが求められるため、専門医による診断・治療方針の相談が重要です。

※注意 日本ではアジョビは小児への投与は認められていません。



参考文献

  1. Katsuki M, Matsumori Y, Kawahara J, Yamagishi C, Koh A, Kawamura S, Kashiwagi K, Kito T, Oguri M, Mizuno S, Nakamura K, Hayakawa K, Ohta O, Kubota N, Nakamura H, Aoyama J, Yamazaki I, Mizusawa S, Ueki Y, Ikeda T, Yamagishi F.School-based online survey on headache, migraine, and medication-overuse headache prevalence among children and adolescents in Japanese one city: Itoigawa Benizuwaigani Study. Front Neurol. 2024;15:1335485.
  2. Hershey AD, et al.Fremanezumab in children and adolescents with episodic migraine. N Engl J Med. 2026;394(3):243-252.
  3. Published SPACE study reinforces efficacy of fremanezumab in pediatric episodic migraine. NeurologyLive. 2025.
  4. CGRP antagonist shows promise in pediatric migraine prevention: SPACE trial results. Pract Neurol. 2025.
  5. The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3). Cephalalgia. 2018;38(1):1-211.
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