片頭痛は「我慢すればよい頭痛」ではありません
片頭痛は、ズキズキと脈打つような頭の痛みだけでなく、吐き気、光や音への過敏、集中力の低下などを伴い、日常生活に大きな影響を及ぼす疾患です。
それにもかかわらず、周囲からは理解されにくく、
- 「仕事や学校には行けているけれど、頭の中では痛みに耐えている」
- 「いつ頭痛が出るかわからず、予定を立てるのが不安」
といった“見えにくいつらさ”を抱えている方は少なくありません。
日本の片頭痛患者を対象とした調査(OVERCOME Japan)でも、片頭痛が仕事・家事・学業・外出など、生活のあらゆる場面に支障をきたしていることが示されています。
当院では、生活の質(QOL)を取り戻す治療を大切にしています。
その選択肢のひとつとして登場したのが、今回ご紹介するナルティークです。
ナルティークとはどんな薬?
ナルティークOD錠(一般名:リメゲパント)は、片頭痛の発症に深く関わる CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド) の働きを抑える飲み薬です。
イメージとしては
「片頭痛の痛みスイッチが入りやすくなる流れに、ブレーキをかける薬」
と考えてください。
ナルティークの大きな特徴
ナルティークには従来の飲み薬にはなかった特徴があります。
①急性期治療に使える
片頭痛発作が起きた時に服用することで
痛みを和らげる作用があります。
②予防にも使える
隔日内服することで
片頭痛発作の頻度を減らす予防効果が期待できます。
③OD錠で服用しやすい
ナルティークは OD錠(口腔内崩壊錠) のため
- 水がなくても服用できる
- 吐き気がある時でも飲みやすい
という特徴があります。
トリプタンとの違いは?
片頭痛の急性期治療では、これまでトリプタン製剤(イミグラン、マクサルト、ゾーミック、アマージなど)が広く使われてきました。
トリプタンは有効性の高い薬ですが、体質や持病によっては使いにくい場合があります。
ナルティークは、トリプタンとは異なる作用機序を持つ薬です。
比較表:トリプタンとナルティーク
| 項目 | トリプタン | ナルティーク |
|---|---|---|
| 作用機序 | セロトニン受容体刺激 | CGRP受容体阻害 |
| 血管収縮作用 | あり | なし |
| 急性期治療 | ○ | ○ |
| 予防的使用 | × | ○(隔日内服) |
| OD錠 | 一部あり | あり |
※すべての方に必ず合う薬ではありません。主治医と相談が必要です。
効果の発現が比較的早いという特徴
― 月経関連片頭痛・頭痛が集中する時期がある方へ ―
ナルティークは、内服後比較的早い段階から効果が現れることが報告されています。
そのため、
- 月経期間に頭痛が集中する方(月経関連片頭痛)
- 出張・試験・繁忙期など、ある一定期間に頭痛が頻発する方
にとって、「その期間を乗り切る」治療戦略として検討しやすい薬剤です。
急性期に使うだけでなく、一定期間、予防的に内服するという考え方ができる点は、大きなメリットといえるでしょう。
ナルティークの使い方(急性期/予防)
| 目的 | 服用方法 |
|---|---|
| 急性期治療 | 発作時に75mg(1錠)を1回内服 |
| 予防 | 75mg(1錠)を隔日(1日おき)に内服 |
※ 1日75mg(1錠)を超えないことが重要です。
※ 予防使用では、約3か月を目安に効果を評価し、継続の可否を検討します。
飲み方に特徴があるため、必ず医師・薬剤師の説明を受けてください。
注射のCGRP関連薬との違い
近年、片頭痛予防としてCGRP関連の注射薬(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグなど)も使用されています。
これらは予防専用であり、発作が起きた際には別の急性期治療薬が必要です。
一方、ナルティークは
「飲み薬で、急性期にも予防にも関われる」
という点で、治療の選択肢を広げてくれます。
どちらが優れているという話ではなく、
- 発作回数
- 生活スタイル
- 注射への抵抗感
- 費用
- 通院可能な頻度
などを総合的に考えて選択することが大切です。
費用の目安
- 薬価:1錠 2,923円
- 3割負担の場合:約880円/錠
予防で隔日内服する場合は、月あたりの費用が増えるため、現実的な継続性も含めて相談します。
(※2026年12月までは2週間分までの処方制限があります)
まとめ
ナルティークは、
「痛い時」だけでなく「痛みを減らす」ことにも関われる
片頭痛治療の新しい選択肢です。
ただし、片頭痛治療は薬だけで完結するものではありません。
- どんなタイミングで痛むのか
- 生活のどこが一番困っているのか
- これまでの治療で何が合わなかったのか
これらを一緒に整理することで、治療は大きく前進します。
今の治療でつらさが続いている方は、どうか一人で我慢せず、片頭痛を専門に診る医師に相談してください。片頭痛の薬は”新しければより良い”わけではなく、”強い薬であればよい”わけでもありません。その人に合った管理をおこなうことが大切です。
参考文献
- Sakai F, et al. Burden of migraine in Japan: results of the OVERCOME (Japan) study. J Headache Pain. 2021;22:28.
- Croop R, et al. Efficacy, safety, and tolerability of rimegepant orally disintegrating tablet for acute treatment of migraine. Lancet. 2019;394:737-745.
- Lipton RB, et al. Rimegepant for migraine prevention: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2021;397:51-60.
ペインクリニック芦屋ピッコロ診療所では西宮・芦屋・神戸市東灘区地域で頭痛専門外来を行っております。

