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2025年10月22日
腰痛は、椎間板ヘルニア、腰椎(せぼね)の変形による関節の痛み、周囲の筋肉の痛みなど、痛みを起こす原因や部位がはっきりする腰痛と、それらがはっきりしない「非特異的」腰痛があります。
腰痛は「腰椎の問題」や「筋肉の硬さ」だけでなく、身体の動き・姿勢・感覚のズレ が重なって、作り出されています。
腰痛は複合的な要因から起こります。起こりやすいものとしては、
これらは互いに影響し合い、一つの痛みが別の場所の痛みを引き起こす"痛みの連鎖" を生じます。そのため、腰痛を根本から治すには、痛みの出ている場所だけでなく、「体の使い方」そのものを変えていく必要があります。
痛みが続くと、人は無意識のうちに「かばう動き」をしてしまいます。
たとえば、片側に重心をかけて立つ、腰を丸めて歩く、など。
こうした偏った動きが続くと、「自分がどう動いているか」という感覚=ボディイメージが狂っていきます。
脳の感覚地図と実際の体の動きがずれると、安全な動作でも「危険」と感じて痛みを発生させるようになります。この悪循環を断つには、正しい動作を脳と体で再学習することが重要です。
関節の炎症や神経の過敏反応が強い時期には、まず痛みを抑える治療を行います。
神経ブロック注射は、炎症を起こしている神経や関節の周囲に局所麻酔薬を注入し、痛みの伝達を遮断します。
腰椎神経根ブロックや仙腸関節ブロックは、急性腰痛や神経痛を伴う腰痛に対して高い有効性が報告されています。また、NSAIDsや神経障害性疼痛薬(プレガバリンなど)の薬物療法も有用です。
痛みを我慢しすぎると、筋肉の防御反射が強まり、回復を遅らせます。
つよい痛みを一度落ち着かせてから、正しい動きを取り戻す。
この順序が、腰痛改善の近道です。
痛みが落ち着いたあとに欠かせないのが、体の使い方を整える運動療法です。
特にピラティスは、体幹の筋肉(コア)を安定させ、背骨と骨盤の動きをコントロールすることで、再発を防ぐ効果が認められています。
Cochraneレビュー(Yamato et al., 2015)では、ピラティスが慢性腰痛に対して疼痛軽減と機能改善をもたらす中等度のエビデンスを示しています。また、日本整形外科学会『腰痛診療ガイドライン2021』でも、運動療法は腰痛の改善と再発防止に強く推奨されています。
近年注目されているのが、VR(仮想現実)を使ったリハビリテーションです。
mediVRカグラなどのVRリハビリ機器は、脳の運動制御ネットワークを再訓練する目的で開発されています。ヘッドマウントディスプレイを装着し、視覚・聴覚・空間感覚を利用して「正しい姿勢・動作」を体験的に学習します。
Wadaら(Front Hum Neurosci, 2021)は、VRを用いた運動療法が脳卒中後や慢性痛患者において、「運動学習」と「ボディイメージ再構築」に有効であると報告しています。
腰痛においても、VRによって動作時の"正しい身体感覚"を安全に再体験することで、「動くと痛い」という恐怖を減らし、自然な姿勢を取り戻す手助けにることが期待されています。
鍼灸や筋膜リリースなどの徒手療法は、筋緊張を和らげ血流を改善する効果があり、慢性腰痛の補助治療として有用という報告もみられます(Yuan et al., Cochrane Database, 2020)。しかし、腰痛の再発を防ぐためには、自分の体を"再教育"するセルフケアと運動が欠かせません。
腰痛は、腰だけの問題ではなく、
体全体の使い方・筋肉・関節・神経、そして脳の感覚が関係する「身体全身の病態」です。
痛みが強い時期はブロック注射や薬で炎症を鎮め、
痛みが落ち着いたらピラティスやVRリハビリで「正しい動作」を再学習する。
自分で動いて治すことが、腰痛の根本改善への道です。
「正しい動きを積み重ねることで、体の感覚=ボディイメージを整えていく。」
それが、これからの腰痛治療の新しいスタンダードになるでしょう。
参考文献
